トップリーグ2021 プレーオフトーナメント準々決勝 登録選手所感

5月8日(土)、9日(日)開催の準々決勝の登録選手が発表になっています。
 

トップリーグ2021 プレーオフ準々決勝「サントリー vs リコー」開催中止のお知らせ|ジャパンラグビートップリーグ公式サイト

ジャパンラグビー トップリーグ2021 プレーオフトーナメント、サントリーサンゴリアス準決勝進出決定のお知らせ|ジャパンラグビートップリーグ公式サイト

リコーは新型コロナウイルス感染者が出て、試合登録に必要な選手が揃わないため、サントリーとの試合は中止になりました。このリリースが5月1日に発表され、本日7日にサントリーの準決勝進出が正式決定しました。


トップリーグ2021プレーオフトーナメント トヨタ自動車ヴェルブリッツ 対 NTTドコモレッドハリケーンズ 出場選手一覧|ジャパンラグビートップリーグ公式サイト

トヨタは、FLフーパーとNo8リードが先発、FBルルーがリザーブというチョイス。FBで先発のローレンスもうまい選手ですが、ロングキックの点ではルルーと比べてさすがに差があると思いますので、陣取り合戦の出来不出来が勝敗を分けるかもしれません。トヨタのSOクロニエもかなりの距離を蹴れますが、ドコモのSOバンクス、FBマーシャルのNZ人コンビもキックのレベルは高いです。

ドコモは、そのバンクスが今シーズン初先発。神戸戦では途中出場からいいプレーを見せましたが、経験値の高い選手のここでの先発は勝負のうえで一つのポイントでしょうね。ドコモはスクラムからリズムを崩されないようにする必要もあります。左PRに入った金は4試合の出場停止があってから久々の登場ですが、見せ場をつくってほしいですね。

 

トップリーグ2021プレーオフトーナメント キヤノンイーグルス 対 パナソニック ワイルドナイツ 出場選手一覧|ジャパンラグビートップリーグ公式サイト

同じカンファレンス同士の一戦ですが、当時とはキヤノンはだいぶ状況が違いますね。

沢木HCが志向するアタッキングラグビーが機能するようになってきました。パナソニックが得意とする形のカウンターから簡単に決められる形をつくらせなければ、かなり競った展開になるように思います。

パナは、3年目のHO島根が前の試合から引き続き先発ですね。戦い方はそれほど変わらないでしょうが、今のチーム状態のキヤノンのアタックをひたすら受け続けるのも厳しいかと思いますので、自らが攻めを仕掛ける局面がどこなのか、興味深いポイントです。

 

トップリーグ2021プレーオフトーナメント クボタスピアーズ 対 神戸製鋼コベルコスティーラーズ 出場選手一覧|ジャパンラグビートップリーグ公式サイト

クボタは、二回戦の試合とリザーブ含めた23名がまったく同じ布陣。今シーズンのベストメンバーという認識でよいでしょうね。負けたら終わりの一発勝負でもあり、まずは失点しないように手堅く臨むように思います。
カンファレンスでは、サントリートヨタに僅差で敗れましたが、その試合ではWTBタウモハパイホネティが出場停止で不在でした。速さに強さも併せ持つアクセントになりうる選手ですので、試合の鍵を握る気がします。
一方の神戸は、怪我等の事情もあると思われますが、BKを一部入れ替えてきました。今シーズンの大部分を固定メンバーで戦ってきたクボタとは連係の熟成では劣るかもしれませんが、ノックアウトステージの最初の関門で成熟度を出せるかが勝負の肝になりそうです。

コカ・コーラレッドスパークス 活動終了

4月30日、コカ・コーラボトラーズジャパンからラグビー部(レッドスパークス)の活動終了が発表されました。

www.ccbji.co.jp

 

活動は2021年末で終了、新リーグへの参入申請は取り下げ、とのことです。

新リーグの基本フォーマットが発表された後である、このタイミングでの発表は無責任とも言えますし、新リーグの体制がどうなるかも不透明の状態のなか、チーム数を減らさないようとりあえずでも申請を受け付けていたから、とも言えますね。

 

サニックスの活動縮小もそうですが、もともとTLで戦っていたが下位の常連だったチーム、TLとTCLの際にいたチームに対して、トップカテゴリーのチーム数削減の影響は大きいと言えるかもしれません。

 

ラグビー部員の今後について適切なキャリアサポートを提供するとのことですので、選手続行のために移籍先を探す、または引退して社業に専念するという選択の自由は提供されるということなのだろうと思います。

 

同じ福岡の香椎地区に練習拠点をおく九州電力が、清水建設のように他企業の選手をオープンに受け入れるチーム体制に変えれば、受け皿になりうるのでしょうけどね。

勝手なことを言うようですが、福岡、あるいは九州全域のラグビーの裾野を維持するために、こうした動きが出てくればよいなと思います。

 

それにしても、新リーグの収益的なビジョンの話が表に出ないまま(裏では参入チームとの間でざっくりとした話はなされているのかもしれませんが)、従来どおり強化(投資)は各チームにお任せということにしていたら、ディビジョン2以下が想定されるチームから、今回のような話が出てくるのは容易に想像できることと思います。

現協会の会長あたりに、このあたりの発想が乏しそうなところが、今後を踏まえると危惧されることろです。

 

 

 

 

 

 

 

2021年度男子日本代表候補選手追加(2名)

4月28日、日本ラグビーフットボール協会から2021年度男子日本代表候補選手に2名を追加することが発表されました。

www.rugby-japan.jp

 

NECのSH中嶋、近鉄のWTBマシレワの2名。

 

マシレワは怪我の影響で、今シーズンはプレーオフトーナメント一回戦、二回戦の2試合のみの出場でした。

サンウルブズでの貢献で、インターナショナルでプレーできることはジョセフHCもトニー・ブラウンACも十分わかっているはずですので、プレーできるコンディションにありそうだから3年ルールのうちに早めに起用しておこう、という意図だろうと想像できます。

 

中嶋については、NECの試合をJJがほとんどウォッチしていなかったということなのか、大きなスコッドには入っているからシーズンが終わったけど頑張れというメッセージなのか、このタイミングの意図がよくわかりませんね。

個人的にはジャパンのSHは、強くないチームに所属している選手の方が適任だろうと思っています。日本の強いチームでプレーしている場合、球出しやディフェンスなどで苦労することがあまりないので、テストマッチのときのジャパンの環境と違いすぎて参考にならない。

中嶋はキックやランなどスキルは総合的に高く、タックルの強さも一定の水準にありますので、今後が期待できるように思います。

 

 

 

 

 

トップリーグ2021 プレーオフトーナメント二回戦 全体所感

プレーオフトーナメント二回戦、いわゆるベスト16の戦いですね。

www.top-league.jp

 

東芝は、WTBナイカブラやCTBタマニバルなど、BKの強いランナーが持ち込んだときにチャンスが生まれましたが、それ以外は大きくゲインできそうな気配があまりなく、攻め手の差がスコアの差に表れた感じですね。

リコーは、フィジカルで優位に立ち、攻守に優勢でしたが、後半にディシプリンが怪しくなる傾向は相変わらず。80分間安定した力を発揮できないと次は厳しそうです。

9選手に新型コロナウイルス陽性との報道も出ていて、試合ができるかどうかもわかりませんが。

 

試合序盤に劣勢ながら意地を見せていたNECは、LOジェフリーズが退場してから試合が壊れてしまいましたね。勝敗は確定的となり、メンバーもだいぶ入れ替わってからですが、終盤に意地を見せられたところはよかったと思います。今シーズンのこのチームは残念ながら、試合が決まってから何本か意地で返す、という同じような展開の試合ばかりでしたね。

サントリーは、順調と言えば順調なのですが、緩い試合ばかりなので逆に心配になります。前節のNTTコム戦も含めてから失点が多いとも言えるものの、試合が決まってからなので評価が難しい感はあります。前述のように、リコーとの準々決勝がスキップになる可能性がある状況は、競った展開が少ないこのチームにとって必ずしもよいことではない気もします。

 

クボタは先に得点を許しましたが、慌てる感じはありませんでした。力のあるランナーが各所にいるので、変わったことをしなくてもゲインできるのが現在のチームの強みですね。

ヤマハは、出足はよかったものの、攻勢を続けられるだけの地力がなかったですね。接点の激しさに関して言えば、TL全体のレベルは間違いなく上がったと思いますので、小兵の選手が多いヤマハは戦い方を再整備しないと、次シーズンでも厳しいだろうなという印象は受けます。

 

三菱重工は、序盤の選手交代という不測の事態がありましたが、粘り強く戦ったという印象。新リーグでディビジョン1か2かわかりませんが、もう少し上に行くためには選手層の積み増しが必要でしょうね。

神戸製鋼は、負傷交代が続出したので2週間間隔があるとはいえ、次戦への影響がちょっと心配されます。連係を深めるべき、BKの選手の怪我が多かったのも不安材料ですね。個々の選手に力があるので、多少雑な試合をしていてもこれまでは大きな問題はなかったですが、これから先を勝ち進むには連係を一段階上げる必要があります。

 

ホームの花園での近鉄は気持ちの入ったゲームを見せましたが、スクラムの攻防で圧倒されたのが誤算でしたね。スクラムワークがもう少しうまくできていれば、アタックの機会はもう少しつくれたように思いました。WTBマシレワやCTBフィフィタのような個の力のあるランナーを活かす機会が少なかったのが残念でした。

パナソニックとしては、全力を出し切る必要がなかった試合だったのは自明ですが、スクラムで優位に立てたので、さらに楽に戦うことができた印象です。

 

トヨタは、リードをしてからディフェンスが緩くなる傾向がありますね。安定したゲーム運びという試合がほぼないので、地力はあるのでしょうが、強いチームという印象が薄いです。

一方、日野は気持ちの入った試合を見せました。引退するLO北川が最後にキックを蹴る場面は、チームメイトの彼へのリスペクトが感じられるいい光景でしたね。

 

Jスポーツの実況で、「オフェンスのキヤノン、ディフェンスのNTTコム」というような言い方をしていましたが、前節で94点とられたチームがディフェンスも何もないだろうと思いました。。

そのNTTコムは、特に強みを見せることもなく、ふわっとした感じでシーズンが終わりました。選手層が特段薄いということもないはずですが、新たに獲得した外国籍選手を何となく起用していただけというような印象で、あまりチームの特色は出ませんでしたね。ラグビーに力を入れていないわけではないでしょうが、新リーグではコーチ陣のあり方も含めてチームのつくり方を見直した方がよさそうです。

キヤノンは、リーグ終盤に調子を上げてきた勢いがそのまま出ました。BK中心に個人の力で差が出せるタレントがいて、リーグ終盤からは相手にも恵まれていた側面があるので、次戦のパナソニック戦で、第3節で完封された相手との試合がどのような展開になるかは注目です。沢木氏の意地もあるでしょうし。

 

南アのFWが両チームに多かったということもあるでしょうが、双方接点が激しいディフェンスを見せました。

Hondaはディフェンスが集中できれば、ある程度引き締まった戦いはできるチームだと思います。新リーグでのカテゴリーはわかりませんが、アタックに差が出せる選手が構成上増えないと、上に行くことは厳しい印象がありますね。
ドコモは、勝つには勝ちましたが、セットプレーの安定とディシプリンの徹底という課題は残りました。とは言うものの、シーズン序盤から同じような状態ではあるので、コーチ陣が徹底しようとしても戦力的になかなか修正しきれないところなのだろうとは思います。次はトヨタで、総合力では劣るでしょうが、相手ごとに布陣を変えるアッカーマンHCの采配に注目です。

 

トップリーグ2021 プレーオフトーナメント二回戦 登録選手所感

TLチームがすべて登場するプレーオフ二回戦。

残り試合も少なくなってきたので、大した予想ではありませんが、勝敗にも触れてコメントしてみたいと思います。

 

トップリーグ2021プレーオフトーナメント 東芝ブレイブルーパス 対 リコーブラックラムズ 出場選手一覧|ジャパンラグビートップリーグ公式サイト

東芝は、好機での得点力不足を念頭に置いたためか、BKに力を入れたような布陣。リコーのサイズのあるFWに対し、和製LOコンビやリーチ、マット・トッドなどがいかに体を張れるかに勝負がかかってくると思います。

リコーは、ポジションによって多少の入れ替えはありますが、リザーブも含めてここ数試合に出場しているメンバーです。リザーブも先発と遜色のない選手が揃っていて、23名の勝負という点では分がありそうですね。

24日(土)実施の4試合のなかでは、比較的戦力差が少ない対戦だと思いますが、今までの流れからするとリコーが優位でしょうね。東芝としてはゲーム前半のスコアを優勢に進めたいところです。リコーの10アイザック・ルーカスに気持ちよくプレーさせないケアが必要でしょうね。

 

トップリーグ2021プレーオフトーナメント サントリーサンゴリアス 対 NECグリーンロケッツ 出場選手一覧|ジャパンラグビートップリーグ公式サイト

日本代表候補に多くの選手が入ったサントリー。初めてのエントリー、あるいは久々という選手にとっては力を見せておきたいところです。候補選手のなかでは、No8タタフはおそらくコンディションだと思いますが、CTB梶村は不在ですね。このあたりはチーム内の競争もあります。コンディションかローテーションか、リーグ戦の最多トライゲッターのWTBテビタ・リーも不在です。

NECにとっては残念ながら勝機を見出しにくい試合ですが、粘り強いディフェンスでロースコアの勝負に持ち込みたいところ。サントリーは速さのあるランナーは数多いですが、国産選手が対処しづらい、速さと強さを兼ね揃えたタイプは相手の先発ではNo8マクマーンぐらいなので、一発でビッグゲインされないように特に彼に注意したディフェンスが必要でしょうね。もう一人強力なCTBケレビも控えていますが、彼が出場するときはマクマーンかSOバレットが下がるときなので。

サイズがあるLOジェフリーズ、FLタファあたりのハードワークは接戦に持ち込むには不可欠ですが、ベテランの廣澤、細田の頑張りにも期待したいですね。

 

トップリーグ2021プレーオフトーナメント クボタスピアーズ 対 ヤマハ発動機ジュビロ 出場選手一覧|ジャパンラグビートップリーグ公式サイト

ルディケHCの考え方なのかもしれませんが、クボタは16チームのなかでもトップクラスに布陣に変化が乏しいチームですね。リザーブも含めてほぼ同じです。4試合出場停止だったWTBタウモハパイホネティが帰ってきました。

対するヤマハは、2021年新卒組の7庄司、15奥村を先発で起用してきました。フレッシュでないというと失礼ですが、32歳のHO名嘉も今シーズン初先発。クボタのサイズとパワーに対抗するためか、どちらかというとサイズを重視した布陣のような気がしますが、アタック時のBKがややパンチ不足のように思いますね。

今季引退のFB五郎丸はコンディション不良のようでメンバー外。グラウンドで現役最後の瞬間を迎えるということにはならない可能性が高いように思います。

 

トップリーグ2021プレーオフトーナメント 三菱重工相模原ダイナボアーズ 対 神戸製鋼コベルコスティーラーズ 出場選手一覧|ジャパンラグビートップリーグ公式サイト

三菱重工は、先週雨中で試合を行った後でハードですが、ロースコアの展開に持ち込むには二列目、三列目のサイズがあるFWがブレイクダウンで相当に頑張る必要がありそうです。SOウィルソンのロングキックを有効に使って、タッチに出してでも相手に連続アタックをさせないようにした方が大量失点は防げそうには思います。

神戸製鋼は、4試合出場停止だったNo8ナエアタが帰ってきました。また、リーグ戦最終節で逆転トライのHO松岡に先発の機会が与えられました。BKの面子がなかなか強烈ですね。日本人資格で出場できる選手が多いから可能になるわけですが、11から15のサイズ感は、TL史上最大級ではないかと思います。

神戸製鋼は、コンディション、ローテーション、両方の事情があったかと思いますが、リーグ戦ほとんどメンバーを固定しないで戦ってきました。プレーオフを勝ち抜くためには、コンビネーションの練度を上げていかないと思います。番狂わせの可能性はほぼないでしょうね。

 

トップリーグ2021プレーオフトーナメント NTTコミュニケーションズシャイニングアークス 対 キヤノンイーグルス 出場選手一覧|ジャパンラグビートップリーグ公式サイト

レッドカンファレンス4位のNTTコムとホワイトカンファレンス5位のキヤノンの一戦は、二回戦の8試合のなかでは一番力関係が読みにくい試合かと思います。キヤノンはリーグ戦の日野戦が試合中止のドロー扱いでなければ、上の順位でフィニッシュしていた可能性が高いですしね。

NTTコムは試合の出来不出来がはっきりしていて、上位チーム相手にはあっさり失点するシーンが目立ちました。特に直近のサントリー戦では94失点を喫しており、そこからどうチームを立て直してきたかがポイントになります。守り切れるつくりのチームではないので、立て続けの失点という展開にさせなければ、勝機は見出せるかと思います。

一方のキヤノンは、後半調子を上げてきましたが、序盤の神戸製鋼パナソニックには大差で敗れています。チームビルディングの途中で大敗したという見方もできるものの、力関係が拮抗した勝負でどうなるかがちょっと未知数な感もあります。

チームの勢いの違い、FWにパワー勝負できる人材がより多いという点で、キヤノンが若干有利と見ます。

 

トップリーグ2021プレーオフトーナメント Honda HEAT 対 NTTドコモレッドハリケーンズ 出場選手一覧|ジャパンラグビートップリーグ公式サイト

お互いに南アの選手が多いHondaとNTTドコモの対戦。

Hondaはディフェンスを粘り強くして、ロースコアの展開に持ち込みたいですね。NTTドコモもそれほど大量得点するチームではないですが、WTBマピンピ、FBマーシャルあたりが走るシーンを多くつくられると、止め切るのは難しくなってきます。

ドコモとしてはここで負けると、せっかく上昇気流に乗ったシーズンが中途半端に終わってしまうので、名将アッカーマンHCは確実に勝ち切るプランで来るはずです。先に書きましたが、マピンピやマーシャルあたりが相手ディフェンスのギャップを突くようなシーンが多くなるような気がしますね。

 

トップリーグ2021プレーオフトーナメント 近鉄ライナーズ 対 パナソニック ワイルドナイツ 出場選手一覧|ジャパンラグビートップリーグ公式サイト

TCL勢で唯一勝ち残った近鉄パナソニックの対戦。

近鉄では、コンディションの事情かわかりませんが、SHゲニアが不在ですね。今シーズンのほとんどのゲームタイムをSOクーパーとのコンビで組んでいるので、不安材料ではあります。

パナは、コンディションかローテーションかわかりませんが、若干FWが軽めですね。前半これで試してみて、後半にギアをあげるという戦略かもしれませんが。

もちろんパナが優位の試合ですが、近鉄は立場的に失うものはないはずですので、せっかくの花園のゲーム、受身に回らず、果敢に前に出てほしいと思いますね。フィジカルが強い面子は揃っていますので、前節復帰したFBマシレワやCTBフィフィタあたりが一気に取り切るシーンが見られるかもしれません。

 

トップリーグ2021プレーオフトーナメント トヨタ自動車ヴェルブリッツ 対 日野レッドドルフィンズ 出場選手一覧|ジャパンラグビートップリーグ公式サイト

トヨタは、外国籍選手枠はNo8リード、FBルルーのコンビで、FLフーパーはリザーブのスタート。CTBはマレ・サウ、トンプソンのコンビが多かったですが、この日はローレンスが先発でトンプソンはリザーブですね。

日野は、前節出場していたNo8堀江やSOクリップスあたりが不在、コンディションの問題か戦術的な問題か。いないと困る選手ですが、SHプルの足の具合は出場してよいような状態なのか。怪我人多数、コロナ感染も起こり、ようやくここまでたどり着いたシーズン。勝利は厳しいかもしれませんが、FWの身体を張ったプレーに期待したいですね。今シーズン引退のLO北川は古巣相手にラストマッチとなる可能性が高いように思います。

 

 

トップリーグ2021 プレーオフトーナメント一回戦 全体所感

プレーオフトーナメント一回戦は、やはり戦前の予想のとおり、TLとTCLの試合の強度の差が微妙なところで勝敗を分けたように思います。

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雨の瑞穂ラグビー場豊田自動織機NECの試合。

織機はかなり余裕をもった戦いでTCLを首位で終えていました。雨でボールを回しにくい事情もあったと思いますが、アタックがやや単調で、今までのリーグ戦で簡単にスコアできていたことが災いしたような感じがしますね。前半にNECを自陣に押し込んだシーンでは、FWの突進だけでなく、もう少しサイドへの展開を混ぜたらトライは増えたような気がします。

地力は織機の方があったように思いますが、キックオフリターンの処理のミスで2回簡単にトライを失ったのがもったいなかったですね。

NECは序盤に幸先よくスコアしてからは、ペナルティも多くなり、押されるシーンが増えましたが、粘りのあるディフェンスを見せました。ペナルティが重なった時間帯で警告が出ていれば、試合の展開は変わったように思います。雨で攻守に身体を張るシーンが多くなったなかで、負傷していたLOジェフリーズが戻っていたのは大きかったですね。

 

こちらも雨の花園、三菱重工コカ・コーラ

ボールが展開できる天候であれば、重工が優勢に試合を進められたかもしれませんが、雨で単調なアタック以外はしづらかったこともあって、コーラのディフェンスも的が絞りやすくなりましたね。コーラは序盤にモールから簡単に2回トライされ、大差の試合となる心配もありましたが、途中からよく修正しました。

こういう悪天候の試合では、キック力のある選手がいると陣地を挽回できて有利です。重工はウィルソンがSOに入っていてよかったように思いますね。CTBリトルは一瞬の隙を見逃さない質の高さを見せました。

 

一方、天候に恵まれた秩父宮サニックス近鉄の試合。TCL勢が唯一TLチームを破った試合になりました。

サニックスは、怪我人も多くて選手起用の難しさもあった思いますが、BKの守りがちょっとアンバランスな感じがありましたね。活動縮小の報道の影響も少なからずあったかもしれません。

近鉄はTLとTCLの試合強度の違いか、サニックスのアタックに差し込まれるシーンもありましたが粘ったディフェンスを見せました。後半に勝利が見えてきてからは、ディフェンスも集中して前に出られるようになりました。SHゲニアも後半になってキックを織り交ぜるなど、名手のよさが出てきました。戦力も近鉄の方が厚みがありましたかね。

 

もう一試合は、雨が降ったり、晴れたり、目まぐるしく天候が変わるなかで行われました。日野とTCL4位の清水建設の試合。

一番戦力差がある試合かと思っていましたが、清水建設は元東芝のFBバンワイクの活躍などで、前半はリードしました。2020シーズンのサンウルブズのメンバー、SOエイプリルは先制のトライにつながるキックパスなど、好プレーもありましたが、後半にキックを立て続けにチャージされる軽いプレーで、勢いを相手に渡してしまったのが残念でしたね。

日野は反省材料も多い試合だったでしょうが、なんとか勝ち切りました。

判定がやや疑わしいと思われるシーンも多い試合でした。後半26分、清水建設のディフェンスがボールのうえに手を差し入れたように見えたSHプルのトライの場面で、解説の大西氏の、日野の選手があまり喜んでいませんね、とか、トライの判定に日野の選手が一番驚いていましたね、といったコメントには笑えました。

このシーンが実際どうだったかはTMOの映像でもはっきりしなかったのでわかりませんが、サッカーなどでも言われるように、審判は自分ではっきりと見えていない状況では、現場の選手たちの反応に注意を払う習慣があってもよいように思いますね。審判をやったこともないのに偉そうなことを言うようですが。

 

コロナの事情で開幕が遅れたため、当初予定されていたTCL上位4チームが参加するセカンドステージのリーグ戦はなくなりました。一発勝負ではなく、リーグ戦でTL勢と複数回身体を合わせる機会があったならば、ちょっと違う結果になっていた可能性もあるので、そこは残念ですね。

 

今シーズンの戦績だけで新リーグのディビジョン分けが決まるわけではないものの、現実的にはこの4試合に出場したチームの多くは、ディビジョン2に組み込まれる可能性が高いように思います。

サニックスに関する報道があるように、新リーグで各チームの陣容がどのように変わるかわかりませんし、外国籍選手の起用ルールなどもどうなるかわかりませんが、各チームの戦力が今シーズン並ぐらいだとすると、ディビジョン2が一番戦力差が少なく、クロスゲームが多くなるような気がしますね。

 

新リーグに関する現在地について思うこと

新たにプロリーグを立ち上げるとぶちあげて、それが頓挫し、実質的には現状のTLのマイナーチェンジでありながら、変化したところを色々と演出しなければいけない悩ましい状況にあるのが新リーグ構想の現在地です。

 

JリーグBリーグのように、すべてをプロ化するならば、やるべきことはまだシンプルだったでしょうが、新リーグではチームの法人化を必須としなかったため、プロ志向のチームと、従来どおりの企業チームが混ざり合うであろう、同床異夢もいいところの体制で始動しないといけないところに難しさがあります。

 

少々前に発表された記事ですが、球技ライター大島和人さんの、Bリーグの前チェアマン大河正明氏のインタビューをもとにした新リーグに関する記事は、最近各種メディアで頻出している新リーグ準備に関する問題点を整理したものとなっています。

news.yahoo.co.jp

 

とはいえ、大島さんもわかったうえであえて書いているような気もしますが、ところどころ突っ込みどころがあるように感じますので、記事を引用しながら、現状個人的に考えるところを書いてみようと思います。

 

ラグビー世代」が現役のうちにサステナブルな仕組み を作っておかないと、より悪い条件の後ろ向きの変化となる可能性が高い。代表ビジネスのポテンシャルを活かして改革のインセンティブに使いつつ、可能な限り早く改革を実現させる。それが大河の主張だ。

2つ目のポイントは企業との向き合い方だ。新リーグの立ち上げに向けた大きなハードルが企業との関係で、カテゴリー分けに関して企業の反発があるという報道もされている。競技力だけで1部から3部までの割り振りを決めるならば単純だ。ただ事業性や社会貢献、地域密着のような「数字で測りにくい」ポイントでチームを評価することは技術的に難しい。低評価を受けた側は当然ながら反発をする。

 「サステナブル」な仕組みをつくろうと模索したうえで、従来のTLで義務ではなかった、社会貢献や地域密着、アカデミーなどの「数字で測りにくい」、競技普及に関する諸々の要素を各チームに課したわけです。

そもそも各チームの取り組みをポイント化する審査があること自体は事前のアナウンスがあったでしょうし、TLとの差別化のためもあって、「数字で測りにくい」社会的な取り組みを加えるという新リーグに関する考え方は、今までにもそれなりの頻度で説明が行われているはずです。

考え方に100%納得したかどうかは別としても、新たにアカデミーを設立したり、SDGs的な取り組みを始めたりしているチームもあるわけです。

ディビジョン1の数を現状のTLのチーム数16よりも絞るということも事前に伝えられていたでしょう。

現状の審査の順位に文句をつけているようチームは、ディビジョン1に入れそうもないか、当落線上にいるところであろうと思われるわけです。

まあ思っていたよりも競技以外の要素の配点が高かった、というようなことはあるかもしれませんが、自チームがトップカテゴリーに入れなさそうな状況が出てきたからといって、今更泣き言を言うなよというのが個人的な感覚です。

新しい取り組みを始める際に反対意見が出るのは当たり前で、組織でコンセンサスをとって決めた方針がある以上、その意見に過度に反応する必要はないと思いますね。理屈としては。

 

ラグビーの新リーグ立ち上げを見て、危惧を感じるのは企業へのリスペクト 欠如だ。ラグビー界の未来を明るいものにしよう、ファンを楽しませようという大義は極めて重要だ。一方でチームのオーナーは企業で、彼らは選手を雇用し、施設面でもこの競技を支えている。ファンや選手のために、企業が“仲間”でいてくれる状況を維持しなければならない。

リスペクトを欠いているわけではなく、「企業が“仲間”でいてくれる状況を維持」するために、法人化を義務としないなど一定の配慮をしているのだと思います。

前準備室長の谷口氏も、ラグビー仲間が極力脱落しないようにしたい、とあちこちのインタビューで散々言ってましたしね。

 

バスケは2015年の改革の時点で、B1からB3までのカテゴリー分け審査に参加した47チームのうち、37チームがプロだった。企業チームは少数派だったわけだが、それでもバスケ協会の川淵三郎会長(当時)や理事だった境田正樹弁護士、そして大河は企業に対する細やかな気遣いをした。ラグビートップリーグに参加する全チームが企業チーム。なおさら企業の論理に寄り添う必然性 がある。

企業の論理に寄り添うだけであれば、現状のTLを変える必要はないわけです。

大企業におんぶにだっこ状態のTLが、経営環境等諸々考えると、「サステナブル」な仕組みではないという危機意識があったから、プロリーグ構想が持ち上がったのでしょうし、それを引き継いでの新リーグ構想になったのでしょう。

 

基本的に企業はチームの法人化を嫌がる。法人設立のプロセスが面倒という事情もあるが、「チームを潰しにくくなり、負担が固定化する」「プロ化で支出が増える」といった懸念を持っているからだ。逆に言うと「チームを背負いきれなくなっても新たなオーナーに引き継げる」「今以上にラグビーへの支援が増えない」という確証があれば、企業はトップリーグのプロ化とチームの法人化を拒否しないだろう 。

「仮にリーグをプロ化するならば、チームの法人化は必須だ」とこの段落の前に書かれているのですが、法人化を嫌がる企業があったから、新リーグ構想が中途半端な代物になっているわけです。

 

法人化で軌道に乗ったチームの事例が続けば、法人化の流れは加速するように思います。
本来であれば、少なくともディビジョン1は、法人化に前向きなチームだけで構成すればよかったのでしょうが、離脱チームが出ることを恐れて日和ったので中途半端になった感はあります。楽観的に見れば、法人化については時間が解決していくこともあるように思います。

 

鎖国政策はやめたほうがいいと思うんです。日本ハンドボールリーグに葦原(一正/元Bリーグ事務局長)が行ったのと一緒で、ラグビーにもそういう知恵を持った人が行けばいい。プロリーグ、トップリーグのトップはビジネス感覚が必要です。サッカーの人も結構そうだけど、ラグビーの人はラグビーが大好きですね。だからラグビーじゃない人の話を聞こうとか、そういう人を中に入れて本気で改革しようというのがない。そこは変えたほうがいい 」

ラグビーが外部人材を登用した実績がなかったわけではなく、サンウルブズDeNAベイスターズの初代社長だった池田純氏や、外資系金融から渡瀬裕司氏を招聘した実績がありますし、準備室長を務めた谷口氏も本来はアカデミシャンなわけです。

登用はしているけれども、権限移譲が十分でなく、効果が中途半端だというのは確かだと思います。

 

審査に関して企業から苦情があったから、協会の会長が「自分が決める」と発言したとか、さる理事が「谷口理事ではまとまらない」と言った、とかいうような記事も別にありましたが、協会内の正規のプロセスを経て決めたであろう決定事項に関してこのようなことを外部に漏らす協会の人間はいったい何を考えているのか。

おそらく何も考えていないのでしょうが、このガバナンス欠如、当事者意識の欠如ともいうべき協会の状況が、新リーグを進めるうえで足かせになるのでしょうね。

協会とリーグの責任範囲を早期に、かつ明確に切り分けることが肝要です。