対アイルランド戦 試合所感
11月6日、ダブリンで行われたアイルランドとの一戦は、5対60で日本代表が敗れました。
ジョセフHCになってからでは最も大差がついた敗戦となりました。
SOセクストンの100キャップ記念のホームゲームということもあったでしょうが、相手フィフティーンの気迫にジャパンは序盤から飲まれたのか、持ち味を発揮することがまったくできませんでしたね。
ジャパンのディフェンスの的を絞らせないためか、アイルランドはキックをあまり使わず、ボールを大きく動かしてきました。強いランナーに守備網のギャップを突かせるセクストンの組立ては巧みでした。
ジャパンはスクラムはそこまで悪くありませんでしたが、ラインアウトも苦しく、接点はアタックでもディフェンスでも終始劣勢でした。実力上位の相手にミスを多発しては接戦に持ち込むことは難しいですね。
大敗の理由に、コロナ禍による試合不足をあげている評論家もいましたが、2週間前のワラビーズとのゲームを「接戦」と言っていたのは何だったのかということになります。
チーム戦術の細かいところを詰めるだけの実戦が足りていないのは確かであろうものの、コーチ陣と選手の大部分は2019年と変わっていないですからね。
ワラビーズ戦は相手のミスもかなりあったのであまり目立ちませんでしたが、ジャパンはこの2試合でBKが活きるようなアタックをほとんどできていません。
このような試合を見てしまうと、2019年は本番前に代表活動に集中できて、フィットネスも含めて長期で強化できていたのがやはり大きかった、という結論になってしまうような気がします。
この試合は相手の出来がよすぎたとも思いますが、この大差は今まで積み上げてきたチームの自信を崩しかねないかもしれません。
相手のハーフ団に圧力を与えられるような積極的なディフェンスが必要です。
次のポルトガル戦は新しい選手も試すでしょうが、この負けの後だと保守的なメンバー選考をせざるを得ないような気もちょっとしますね。
リーグワン 入団 NEC・日野ほか
リーグワンの開幕日まで1ヶ月ほどになりましたが、新加入の動きは活発です。
11月1日、クリタウォーターガッシュに1名が新加入。
NZ人のバックロー、ブラッド・ヘモポ。
2020年にアメリカMLRのニューイングランドフリージャックスでプレーしたようですので、日本に帰国した元代表の畠山とおそらく被っているかと思います。
一方、11月4日に九州電力キューデンヴォルテクスは2名の加入を発表。
九州電力キューデンヴォルテクス、2021年度 新加入選手のお知らせ | JAPAN RUGBY LEAGUE ONE 公式サイト
WTBの豪州人ヴィリアミ・レアはまだシニアレベルでのキャリアはないようですが、CTBのNZ人サム・ヴァカは7人制NZ代表のキャリアがありますね。直近はフランスでプレーしていました。
このあたりのチームは、今後もそれほど派手な動きはなさそうな気がしますが、新リーグに向けてそれぞれの立場で戦う準備を整えてきているようです。
また、NECグリーンロケッツは新シーズンへ向けた補強はそろそろ終わりに近づいてきたとは思いますが、4日と5日と連続で発表。
2021-22シーズン 新加入選手のお知らせ | ニュース | NECグリーンロケッツ東葛公式サイト
2021-22シーズン 新加入選手のお知らせ | ニュース | NECグリーンロケッツ東葛公式サイト
昨シーズンNTTコムでプレーしていたNZ人のSOフレッチャー・スミスは、千葉県内で浦安から我孫子に本拠地を移すことになりました。
特別枠の兼ね合いで出場機会は限定的でしたが、キックを絡めたスピード感のあるプレーは日本向きだったように感じますので期待できると思います。
一方のWTBブレイク・ファーガソンは13人制のラグビーリーグからのスイッチ。先日加入が発表されたシバサキもリーグからの転向ですが、このあたりはチェイカ総監督の伝手なんでしょうかね。
日野レッドドルフィンズは4名が新加入。
日野レッドドルフィンズ、2021-2022シーズン追加加入選手のお知らせ | JAPAN RUGBY LEAGUE ONE 公式サイト
3名はまだシニアレベルのキャリアがない選手ですが、No8のナシ・マヌはSRや欧州でのプレー経験も豊富なベテランです。
1988年生まれでクライストチャーチボーイズハイスクール出身ですので、日本でプレーしているマット・トッド(東芝)、コリン・スレイド(三菱重工)とも一緒にプレーしていたのではないかと思います。前シーズンで引退した小野晃征ともおそらく。
贅沢をいえばキリがないですが、このチームはこの補強で穴といえるポジションはなくなったように思いますので、完了かもしれないですね。
対アイルランド戦 登録選手発表
6日、ダブリンのアビバスタジアムで行われる日本代表のメンバーが発表されました。
前回のワラビーズとの試合から先発は3名が入れ替わり、10に田村、前回リザーブスタートだったライリーが14に、フランスから合流した松島が15に入ります。
LO小瀧が追加召集されましたが、この試合はLOの専門職はリザーブに入っていません。
非常時には、ガンターや姫野を回すか、リザーブの徳永を入れたりするというなのでしょうね。
一方のアイルランド代表。
2019RWCの日本戦では不在だったSOセクストンが先発。彼の100キャップ目の試合のようです。
7月の試合ではB&Iライオンズの遠征で不在だった主力も戻っており、対ジャパンという意味ではほぼベストの布陣と言えるかと思います。
特にFWは馬力のある選手を多く使ってきていますね。2019RWCでも対戦しておらず、7月もライオンズ遠征で不在だったCTBアキの馬力を活かした突破はジャパンが苦手な類のアタックのような気がしますので十分ケアしたいところ。
ジャパン次のポルトガル戦は、経験の少ない選手をもう少し増やした布陣にするように思いますので、この試合でまずはチームの現在地を確認したいですね。
リーグワン 入団・退団 釜石・中国電力
10月28日、ディビジョン2の釜石シーウェイブスが新加入1名を発表しました。
「CTB/FB/WTB」と紹介されているので、BKのユーティリティと思われますが、NZ人のキャメロン・ベイリー。
カンタベリーでのキャリアはありますが、SRは未経験のようです。
選手層が厚いチームではないので、様々な起用のされ方がありそうです。
また、本日11月1日に中国電力レッドレグリオンズが1名の新加入を発表。
ラグビーファンにはおなじみの名前です。
キヤノンイーグルスの退団はすでに発表されていた、サンウルブズの顔FLエドワーク・カークが加わるとのことです。
イーグルスでは登録枠の関係もあって、出場機会は限られていましたが、新チームは外国籍選手がそこまで潤沢ではないと思われますので、元気なところが見られそうです。
リーグワン 選手出場資格の変更について
10月26日、「JAPAN RUGBY LEAGUE ONE 2022」の大会概要が発表されました。
なお、ラグビーリパブリックでこのリーグを「リーグワン」と呼んでいるので、当ブログでも今後倣うことにします。まあ、略称はこれが一番しっくり来るでしょうね。
【10月4日発表時点で、プレーオフトーナメントおよび入替戦はポストシーズンとして区分していましたが、「レギュラーシーズン」に変更】という?な変更もあるものの、基本的には以前にもアナウンスされていた内容ですが、選手のカテゴリ区分の変更という大きな改定がありました。
従来のTLの国籍基準とは違い、日本代表選出資格を基準にあらためてカテゴリ分けされた、ということになります。
意図としてはわかりますが、「資格あり」の選手をどのように判定するかが少々疑問です。
WRが居住実態の厳格化を進めているようですので、日本に居住して国内チームでプレーし続けているものの母国に帰国していた期間が長くて結局代表には選出できない、というようなことがないように基準を明確化してほしいと思います。
公になっていないだけですでに基準はあるのかもしれませんが、チームによって運用があいまいだと後々揉めそうな気がします。
また、どうもアジア枠はなくなったようですね。
さて、ワイルドナイツを例に考えてみると、直近のワラビーズ戦にも日本代表として出場していたミラー、ガンター、コーネルセン、ライリーはカテゴリAの枠で出場可能。他国代表歴のあるクルーズ(イングランド)、パークス(ウェールズ)、そして新シーズン加入するコロインベテ(豪州)、そしてもう1枠外国籍の選手を同時に起用できるということになります。
やや極端な起用例かもしれませんが、新ルールではこのチームがかなり有利なような気がします。
この新ルール、引っ張ってこのタイミングでの発表になりましたが、各チームには事前に周知されているのでしょうかね。
出場できる戦力へのインパクトがかなり大きく、いまさら言うなよという声があがらないか、ちょっと心配ではあります。
非日本代表資格選手の出場枠は、TLでは5名(外国籍2名+特別枠3名)でしたから純減になるわけで、新ルールを前提にチームづくりをしていなければ影響は大きいはずです。
高校・大学から日本でプレーしていて、5年居住以上の留学生出身選手の出場機会は多くなりそうですが。
海外出身選手がすべてというわけではないですが、パワーやサイズの面では、選手の構成によってTL時代を上回るチームとそうでないチームに分かれそうなのがちょっとなあという気はします。
すでに他国代表の経験があり、日本代表選手になる資格のない選手に関しては外国籍選手とする、という扱いがどうなったのかも気になります。
この扱いは2016年度シーズン開幕前に決まり、その後に日本国籍を取得したロスアイザック、ヘンリーブラッキン、ボークコリン雷神の3選手がラグビー協会に嘆願書を出していました。2020年度シーズンでは規約は変わりませんでしたが。
ロスアイザックは残念ながら年齢的に引退が近く、残りの2名は東京オリンピックのセブンズに日本代表で出場しましたので、カテゴリAで問題ないはずです。
だからといってこのような立場の選手に配慮が不要というわけではなく、年齢的には大ベテランになるもののルール改定前に日本国籍を取得した元他国代表選手(TLでは日本選手扱い)は若干名現役でいるはずです。そういう選手はどのような扱いになるのでしょうかね。
結論として、今般のルール改定では日本出身の選手も身体強化、自らの強みのブラッシュアップを図らないと出場機会を得ることが難しくなると思いますので、方向性としては理解します。
しかし、チーム間の戦力バランスへの影響がかなりあるのは確かだと思います。
トップリーグ 入団 NEC
オーストラリア戦 試合所感
10月23日に行われた日本代表と豪州代表ワラビーズの試合は、23対32でワラビーズが勝利しました。
スクラムやラインアウトなどのセットピースが終始劣勢で、ワラビーズの単騎のシンプルなアタックでもかなり差し込まれるなど、試合の局面をみた印象からすれば、よくこの点差で終わったなというのが正直な感想です。
もちろん展開によってはジャパンが勝利したシナリオはありえるし、そういう見方があるのはわかります。ただ、プレーの一つひとつを見ればやはり地力の差は感じたし、勝利の臭いはあまり漂わない試合だったと思います。
ジャパンが粘り強く戦ったとも言えますし、ワラビーズのミスが多かったからとも言えると思いますが、7月のライオンズやアイルランドとの試合の後も同じような印象を持ちました。
ティア1クラスのチームに大差で負けるようなレベルは脱却したが勝ち切るところまでは届いていない。ジャパンの現在地はこのようなところなのでしょうね。
私はJスポーツで試合を見ていて、藤島氏だったか村上氏だったか解説のどなたかが、「セットピースがワールドカップのときのレベルまで精度を高められれば、もっといい試合ができる」というような趣旨のコメントをしていました。
ジャパンの消化した試合がワラビーズよりも少なく、試合勘の問題があったと思われるのは事実ですが、その分肉体の疲労も少なく、直前の約一ヶ月間代表の活動に集中できていてフィットネスでは有利だったという事実もまた無視すべきでないと思います。
日本はリーグ戦の期間も短く、代表の活動に時間を割きやすいのが他国と比べて優位な点ではあるものの、2019年のときはホスト国であったから代表選手が所属チームを離れて数ヶ月合宿参加することも許容されたのであり、代表活動を聖域化した強化を前提にしたような発言は、日本ラグビーの中長期的な発展を考えると好ましくないように感じます。
準備に関してたらればを言うのではなく、リーグ戦の強度を高めて、正攻法で強い選手を育成する方向に進んでほしいと思います。
本日遠征メンバーが発表されましたが、こののち、ジャパンは渡欧して、アイルランド、ポルトガル、スコットランドとの試合に臨みます。
試合を重ねるうちにセットピースやプレーの連係などの精度は高まることが期待できますが、その分疲労でフィットネスは落ちてくると思われますので、そのバランスを保って競った勝負ができるかが注目されると思います。
また、固定メンバーではなくできる限り多くの選手を起用して、スコッドの厚みをもたせるのも重要な課題でしょうね。