6月の代表強化について

6月18日、以下のコンペティションにおいて決勝が行われ、シーズンが終了しました。
・Super Rugby Pacific(NZ、豪州、フィジー
・Premiership Rugby(イングランド
・United Rugby Championship(アイルランド、ウェールズ、スコットランド、イタリア、南ア)

翌週には、フランスのTop14、アメリMLRの決勝も行われ、主だった15人制ラグビーのプロリーグのシーズンが終わります。

日本のリーグワンや南米のSLARは先月で終わっていますが、北半球も南半球もおおむね6月下旬にシーズンが終了し、7月のテストマッチを迎えるというカレンダーです。

リーグワンのシーズン前、シーズンで上位に入ったチームが他国のクラブと対戦するというクロスボーダーマッチなるものが構想されていました。
コロナの影響もあったかもしれませんが、まるでそんな話はなかったかのように、しれっとリーグワンの最初のシーズンが終了してしまいました。

他国のカレンダーをまったく考慮しないで思いつきのことを言っていたとはさすがに思いませんが、今となっては各国の順位争いが佳境に入る時期にいったいどのあたりのチームと対戦することを想定していたのか気にはなります。

日本は5月中にシーズンが終わったたため、代表合宿をしっかりやったうえで6月にウルグアイとのテストマッチを2試合組んでいます。
しかし、6月の試合はテストマッチのリリースの対象外ですので、WCに出場するクラスの国で6月中にテストマッチを行うのは日本とウルグアイを除けば、イタリアが25日にポルトガルと試合するぐらいです。
(7月にアルゼンチンに遠征して3連戦を行うスコットランドが、A代表という位置づけでチリと25日に試合をする予定)

ウルグアイも昨秋にWC出場権を勝ち取ることができたからこそこの時期に来日したはずで、ホーム&アウェイのWC予選が7月に控えていれば、おそらく6月の海外遠征はしなかったのではないかと思います。

日本代表が今後6月にマッチメイクしたければ、南米のアルゼンチンVX、ウルグアイ、チリあたりと組むか、欧州でティア2クラスにお願いするぐらいしか、現実的には選択肢がないのが現実。
練習はともかく、試合は相手があって初めて成り立つものですので、国内でお待ちしているだけでは実りのあるマッチメイクは難しいでしょう。

遠征の意義はもちろんありますが、他国のように6月末までシーズンを延ばして国内リーグ戦の試合数を増やした方が強化的にも興行的な意味もあって、中長期で日本ラグビーのことを考えればベターなのではないかという気がします。
日本代表にスポンサーがついている事情は理解しますけどね。しかし強くならなければ、そのお金も逃げていくように思いますので。
 

ウルグアイ代表第1戦 試合所感

6月18日、秩父宮ラグビー場で行われた日本代表とウルグアイ代表の試合は、34対15で日本代表が勝利しました。

 

 
当たり前の話ですが、前向きに捉えようと思えば前向きに、逆にも捉えられるような内容の試合だったように思います。
 
前向きな材料といえば、中心選手の何人かが欠けているとはいえ、WC出場を決めているチームに代表候補のNDSのチームでしっかり勝ちきったこと。
 
ただ、ウルグアイは人口350万人ほどの小国で、選手層はWC出場国の中ではかなり薄い方のチーム。
この日はボールを受けたFWを当てていく、かなりシンプルなアタックを繰り返していましたが、フランスのカストルでプレーするSHアラタなど、アタックに変化をつけられる選手がいればもう少しアンストラクチャーな状況をつくろうとしたかもしれません。
国内選手中心のチームが日本代表に対し現時点で通用することがなにかを試そうとしていたような印象もあります。
 
そのチームに対して、相手がかなりミスや反則を繰り返すなかで、お付き合いをするようにミスをして、前半にあまり有効なアタックができずに攻めあぐねたことはホーム側としては軽く見ない方がよいのでしょう。
スコア的には快勝と言えるとしても、一対一に負けて大きくゲインされるシーンが割と見られたことから手放しでは喜べないでしょうね。
 
代表HCのJJの苦い表情が多くテレビ画面に映し出されていたのも彼の試合の印象を物語っていたように思います。
日本代表の選手のコンディションの影響などもあるのでしょうが、この試合の後に発表された日本代表への昇格はFWばかり4名だったことも、この試合のBK陣に対するJJの評価を表しているように感じます。
 
 
 

ウルグアイ代表第1戦 登録選手 所感

6月18日(土)、秩父宮ラグビー場ウルグアイ代表と対戦する日本代表の試合登録選手が発表されています。

 

www.rugby-japan.jp

 

先発とリザーブの入替はありますが、先日のチャリティーマッチに出場していた選手が大半という印象です。

 

フロントローは先発はそのまま、二列目、三列目の先発はファンデルヴァルト以外は入れ替わっています。

 

チャリティーマッチでは代表キャリアの長い選手を並べていた印象だったSH、SO、両CTBは、SO田村以外は先発が変わっています。

アウトサイドCTBだったラファエレがこの試合ではインサイドCTBに。代表で12での起用は久々のような気がしますが、この入替は意図があるのでしょうか。単純に、走力のあるゲイツを13で試したいということかもしれません。

 

バックスリーの先発はそのままですね。

 

リザーブに入っているメイン平は、チャリティーマッチのメンバーで呼ばれてから順調にステップアップしたという印象。出場できれば初キャップですね。

 

ロス・テロスは今回あまりサイズのある選手が来日していませんが、両チームの先発LO2枚がいずれも190cm未満というテストマッチは最近はほとんどないのではないかと。

 

ボールを大きく動かしたい、似たスタイルのチーム同士の対戦なのだろうと思いますので、コンパクトにディフェンスラインを保てるか、運動量を維持できるか、といった点がポイントになるでしょうね。

インパクトプレイヤーのテビタ・タタフが先発に入っているのも試合のポイントになるような気がします。

来日したウルグアイ代表について

6月18日(土)、ウルグアイ代表と対戦する日本代表の登録選手はすでに発表されていますが、そちらは別に書くとして、今回は来日したウルグアイ代表、ロス・テロスについて記しておこうと思います。

 

来日26名中、フランス、イタリアのチームに所属する選手が3名、残りの23名はペニャロールという自国チームの所属。

南米のスーパーラグビーといえる、SLAR(スーパーリーガアメリカーナ・デ・ラグビー)を今シーズン制したチームです。

 

SLARは、アルゼンチン、ウルグアイ、チリ、ブラジル、パラグアイ、コロンビアの6ヶ国から各1チーム、全6チームで構成されたリーグです。

アルゼンチンのハグアレスがスーパーラグビーに参加していた時代、代表強化のためアルゼンチン代表がハグアレスとほぼ一体だった関係に似ています。

 

とはいえ、パラグアイとコロンビアは自国選手中心でチームをつくるには選手層が足りないため、アルゼンチン人が大量に貸出されていますね。

そのアルゼンチンはハグアレスVXというチームで参加していますが、代表クラスとそれに続く層は軒並み欧州でプレーしているため、若手有望株のチームという位置づけです。今シーズンはペニャロール、チリのセルクナムに続く3位でした。

 

さて、ペニャロールの30名ほどのスコッドのうち、若干名のアルゼンチン人、負傷者を除けば、ほぼすべての選手が今回代表として来日しているということになります。

 

ロス・テロスは、フランスのクラブでプレーしている実力者数名がテストマッチのリリース対象外の試合ということで来日していません。

人口が少ない小国で選手層が厚いわけではありませんので、戦力に影響がないというわけにはいかないのでしょうが、1クラブチームとほぼ同様のまとまりの良さは見せてくれると思います。

ジャパンラグビーチャリティーマッチ2022 試合所感

6月11日(土)、秩父宮ラグビー場で開催された「EMERGING BLOSSOMS vs TONGA SAMURAI XV」のチャリティーマッチは、31対12でEMERGING BLOSSOMSが勝利しました。

 

この試合、筆者は現地観戦しました。
トンガチームを迎え撃つのは日本代表というではないわけですが、8,055名の観客のうちかなりの部分は日本代表のユニフォームを着用していました。
 
筆者の経験上、試合終了後は一定数の観客は混みあわないうちに足早に席を立つものです。しかし、この日は試合後のセレモニーにも大部分が残っていました。
この試合の意義を理解し、チケットを買って現地に試合に足を運んだのは、コアの日本代表ファンなのだろうということをあらためて認識しました。
 
先日も書いたように、筆者はチャリティーマッチに日本代表強化の要素が混ざることに肯定的ではありませんでしたが、この種の試合としてはかなりの人数が集客でき、また日本代表が絡むことでトンガ支援のための試合がそれなりにメディアに露出したことを考えると、妥当な判断だったかなと少し認識をあらためました。
試合の中身が代表の強化としては効果は限定的という意見はあまり変わっていませんが。
 
組織的なディフェンスをつくり込む時間はなかったであろうトンガチームに対し、日本代表候補チームがボールを展開させればビッグチャンスをいくつか演出できるであろうこと、後半途中から選手交代が多くなれば、個人の馬力を活かしてトンガチームが押し込むであろうことは想定済でしたので、かなり予想どおりといっていい試合展開でした。
 
9茂野、10田村、12立川、13ラファエレとアタックの中心に経験値の高い選手が並んでいましたので、EMERGING BLOSSOMSの攻撃の仕掛けは滑らかでした。相手が積極的に前に出るディフェンスをしたわけではないので、これも想定内でしょう。
 
一方で、シーズン途中に怪我から復帰してリーグ戦のプレータイムが限られていたことからこちらに回ったであろうヴィンピー・ファンデルヴァルトの仕事量は目立っていましたし、テビタ・タタフの馬力は同胞を相手にしても際立っていました。
また、代表関連の試合に初めて出場したLO辻の敢闘も評価されるポイントでしょう。
EMERGING BLOSSOMSの収穫としてはそのあたりでしょうか。
 
バックスリー陣はアタック時に大きなゲインを見せたりもしましたが、相手のディフェンスの練度を考えると想定内だったでしょうし、逆にハイボールの競り合いで相手にクリーンキャッチされてゲインされるシーンが多かったのをJJは評価しないだろうなという気はします。
 
とはいえ、チャリティーマッチにありがちな緩さは少なく、トンガチームの選手たちも意欲高く戦ったので見るべき点は多かったと思います。
 
トンガで固定するかはともかくとして、国内の若手選手とトンガ(あるいは国内居住の太平洋出身者)チームのチャリティーマッチを恒例化してもよいように感じました。

 

チャリティーマッチに際し、代表強化について思うこと

昨日、TONGA SAMURAI XVとEMERGING BLOSSOMSとのチャリティーマッチに関して、EMERGING BLOSSOMSの選手選考が当初の位置づけから変容しているのでは、という趣旨の文章を書きました。

 

好意的に解釈すれば、トンガへの日本ラグビー界の連帯の想いを示すためできる限りのベストメンバーを用意して試合に臨む、ということになろうかと思います。

実際にそういう要素が大きいでしょうが、チャリティーマッチが本来の目的の試合にもかかわらず、日本代表に向けた生き残り的な要素が前面に出すぎているように感じます。試合への興味という意味では致し方ないところもあるでしょうが。

 

このチャリティーマッチ自体は有意義だと思います。

しかし、トンガチームはこの試合のための急造チームであって、情熱をもって全力でプレーするのは間違いないにしろ、一週間の練習では練度を期待するには無理があります。

チャリティーマッチであるべき試合に対して、代表の底上げ、セレクションをあてはめようとするのは無理筋であって、代表強化にはしかるべき試合を用意するべきです。

 

2023ワールドカップのプールDで顔を合わせるアルゼンチン。

この7月に以下のようなマッチメイクをしています。

 

【アルゼンチン代表】

7月2日 VSスコットランド

7月9日 VSスコットランド

7月16日 VSスコットランド

※いずれもホームゲーム(アルゼンチン国内)

 

【アルゼンチンVX(A代表)】

7月3日 VSジョージア

7月9日 VSポルトガル

※いずれもアウェーゲーム

 

コロナ後はじめて国内開催する代表の試合ということも重要ですが、アルゼンチン国内とヨーロッパでの同時期開催ということも注目に値します。

アルゼンチンVXの試合はテストマッチ認定ではありませんが、ジョージアはワールドカップの常連で2023も出場を決めていますし、ポルトガルは2023の出場は逃したものの昨秋ジャパンも苦戦したチーム。いずれも簡単な相手ではありません。

 

今回のアルゼンチンVXのスコッドには、ワールドカップ出場経験のあるような選手も含まれていることも注目されているようです。

代表に帯同させて出場機会が限られるというよりは、出場機会を提供してフェアな競争を促すという意味もあるのでしょう。

 

アルゼンチンの方がワールドカップの戦績は上ですが、ジャパンとは一発勝負であれば勝敗の行方はわからない程度の実力差と思います。

しかし、現状のジャパンにはこのようなダブルオペレーションに耐えられるほどの選手層はないでしょうから、このあたりのラグビーに関する国力差は明白です。

 

今回日本代表はウルグアイ代表を迎えて2試合行いますが、もう一段上のレベルを目指すのであれば、ティア1のチームと代表の試合を組みつつ、NDSを編成して南米に遠征するぐらいのことはしていかなければいけないでしょう。

 

昨年のサンウルブズとの試合も今回のチャリティーマッチも興行としてはよいと思いますが、代表強化のためには別の仕掛けが必要な段階に来ているように思います。

ジャパンラグビーチャリティーマッチ2022 登録選手 所感

6月11日(土)、秩父宮ラグビー場にて「ジャパンラグビーチャリティーマッチ2022 EMERGING BLOSSOMS vs TONGA SAMURAI XV」という試合が開催されます。

今年1月に発生したトンガ北部の海底火山の噴火によって大きな被害を受けたトンガに対する支援のため、同国と縁が深い日本ラグビー界が企画したチャリティーマッチです。

TONGA SAMURAI XVのスコッドは、日本の高校や大学を卒業し、日本で長年プレーしている選手を中心に編成されています。
一方のEMERGING BLOSSOMSは、「未来の日本代表を担う選手で編成される」という位置づけです。

さて、試合2日前の本日、両チームの試合登録メンバーが発表されました。

TONGA SAMURAI XV
EMERGING BLOSSOMS

 

TONGA SAMURAI XVは、現役大学生1名も含めた若い選手がスコッドに多いですが、先発はリーグワンでも出場機会がある選手が中心ですね。中島イシレリやレメキのようにジャパンのキャリアがある選手もいます。
バックローやCTB、WTBなどと比べて、HOやSHなどがかなり手薄な感じなのはトンガ人が活躍するポジションを考えると致し方ないところです。
若手のなかには、いずれジャパンに入ってきそうな、2023はともかく2027は可能性がある選手もいるように思います。

EMERGING BLOSSOMSの方は、"EMERGING(新興の)"にそぐわない感じの名前もちらほら見えますね。
30代だったりキャップが50を超えていたりするような選手を使うのだったら、最初からJAPAN  XVと名乗ればよかったような。
チャリティマッチにあまりケチをつけたくないですが、せっかくの企画なので、25歳未満の選手限定ぐらいに割り切ればよかったように思いますね。
TONGA SAMURAI XVのほうがEMERGING BLOSSOMSにふさわしい選手が多いのではないかと。
 
トンガチームは一週間程度の練習ですのでそこまで緻密な試合にはならないでしょうが、お互い個人的なアピールも含めていい試合を期待します。