リーグワン振り返り チーム間の戦力差について

リーグワンの最初のシーズンが終わって2ヶ月近くが経ちました。

 

個々の試合内容に関してはそれぞれの節を消化した際に書いてきましたので、試合以外の事柄について何回かに分けて振り返ってみたいと思います。

 

まずは、リーグのレベルについて。

 

個人的な感覚では、メンバー表を見ただけで勝敗が予想できるようなゲームが、トップリーグ時代よりも増えたような印象があります。

トップリーグ時代も接戦が少ない大味なリーグではありましたが、リーグワンでは上位同士の対戦のはずなのにクロスゲームとはほど遠い、という試合が増えたような気がします。個人の感覚ですが。

 

その一因として考えられるのが外国籍選手の扱いの変更です。

 

トップリーグ時代は外国籍選手の場合、他国の代表経験者が2名、それ以外の選手が3名同時に出場できるという規定でした。そのほかにアジア枠として1名が認められていました。

リーグワンでは、日本国籍未取得の日本代表経験者あるいは日本代表取得見込の選手に関しても日本人選手と同じ扱いになり、日本代表の候補となりうる選手については広く出場が認められるようになりました。一方でそのほかの外国籍選手は4名まで(他国の代表経験者は同時に3名まで)。アジア枠はなくなりました。

 

細かい規定は別として、ざっくりとシーズン開始日時点で48ヶ月以上継続して日本に居住していれば日本人選手と同じ資格で出場できる規定です。あるいは累計で9年以上の居住という条件。

 

継続して5年以上、累計で10年以上というWRの規定に即したものですね。

これによって、日本にルーツを持たない海外出身選手の起用が大幅に増えました。

 

この恩恵を大きく受けたのが優勝したワイルドナイツ。ご存じのとおり元々潤沢な戦力を持ったチームではありますが、新ルールがより有利に働くことになりました。

このチームが若い外国籍選手を長期間継続的に育成し、日本代表クラスにまで鍛え上げたことによるもので、それ自体にはケチのつけようがありません。

 

ただ、日本出身の選手にも代表候補が大勢いるうえに、他国代表経験者もWCを経験したような選手、非代表経験者もSRでバリバリやっていたような選手が揃っています。加えて日本代表クラスの外国籍選手が日本人と同じ扱いで起用できるようになったので、他チームとの比較で戦力バランスがおかしくなりがちです。

 

選手の年俸の総額を決めるサラリーキャップのような制度を導入しないで、このような選手起用が可能なルールにしてしまうと、率直にいって競技がエンタメとして成立しにくくなりますね。特定チームの熱狂的ファンは別として。

 

セブンズも含めて日本代表経験のある外国籍選手が使いやすくなり、また日本の高校・大学出身の外国籍選手は日本人扱いで起用できることが多いということもあって、スピードやパワーの面ではトップリーグ時代よりも戦力が上がったチームが大半でした。

 

それをもって、リーグのレベルが上がったということは可能ですが、ピッチに立つ戦力のチーム間のバラツキは以前の規定よりも大きくなったと思います。

(スコッド上ではさほど感じないのですが、実際のメンバー表で見ると。。)

 

リーグが始まる前に、外国籍選手の扱いについては筆者も同じようなことを書いた記憶がありますが、サラリーキャップを導入して各チームの戦力を均す前提があってですね。

 

サラリーキャップやアジア枠については、別途感想を書こうと思います。

フランス代表第2戦 試合所感

7月9日(土)に国立競技場で行われた日本代表とフランス代表の第2戦は、15対20のスコアで日本代表が敗れました。

 

点差が19点差から5点差に縮まったこと、試合終了まで勝敗の決着がもつれたことを考えれば、第1戦よりは接戦だったと考えられますし、内容的にもそうだったと思います。

 

前半の2本のトライはボールを動かして得られた見事なものでした。

しかしながら、フランスの初キャップのFBスプリングのディフェンスのノミネートミスもありました。終盤のジャパンのチャンスも彼がそう難しくないはずのキック処理をノックオンしたことに始まったもの。ランで大きなゲインも見せましたが、21歳の初キャップはほろ苦いものになったようです。

たらればですが、前の試合のジャミネのように経験値の高いFBが彼のポジションにいれば、ちょっと展開は違ったような気もします。

 

最終的に勝てたチャンスも十分あった試合だと思いますが、Jスポーツの中継で解説者氏が勝てた試合、勝つべき試合と言っていたのはちょっと言いすぎかなという感じはします。

 

気候が冬の南半球で行われているほかの強豪国のゲームでは、もっと激しくボールが動く試合が展開されています。

フランスもこの遠征ではほぼ熱帯の日本にあわせたプレーをしていたはずですので、ディフェンスがある程度機能したと過大に評価しない方が無難のように思います。さすがにコーチ陣はそんなことは考えていないでしょうが。

 

この週末のテストマッチの結果、フランスは初めてランキング1位になりました。

終盤のテビタ・タタフのトライが未遂に終わったのも、彼のエラーというよりはフランスのディフェンダーがしっかり阻止に行ったことによるもの。

簡単にトライを許さないプレーに世界トップを争うチームの厳しさを見た気がします。

 

この試合で日本代表はこの夏のテストマッチの全日程を終えました。

 

10月から11月にかけてすでに発表されているものも含めて数試合(おそらく4試合)テストマッチが組まれると思いますが、予定が立っているのはそこまで。

秋のテストマッチ以降、来年の2月から3月ごろのシックスネイションズ(北半球)、来年7月ごろのラグビーチャンピオンシップ(南半球)を行う国とのWCまでの試合数の差の問題があります。

 

リーグワンの新シーズンのカレンダーはまだ発表されていませんが、おそらく今年と同じようなものになるはず。

シーズン後の7月、8月ぐらいに2、3試合のマッチマイクを必死で組む必要もあるでしょうが、不確定要素ですので11月にはチームづくりをほぼ終えた状態にする必要もありそうです。

フランス代表第2戦 登録選手 所感

7月9日(土)に国立競技場においてフランス代表と対戦する日本代表の登録選手が発表されました。

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先発は前の試合との比較でいうと、フロントローは同じ、LOは2枚とも入替となりました。先発だったファンデルヴァルトは怪我で離脱、もう1枚のコーネルセンはNo8に移ります。
LOは2m超が並ぶ形になりました。サイズはさほど負けていないと思いますが、勝利のためにはこのポジションの選手が存在感を見せる必要があります。
FLは同じで、No8で先発だったタタフはリザーブに。このあたりは後半からインパクトプレイヤーで出てきた方が効果が大きいという狙いもあるのかもしれません。
 
BKはコロナで戦線を離れていたSH齋藤以外は同じ。先発だった茂野はリザーブに。
 
リザーブ組では辻が出場すればデビュー。コロナから復帰の堀江、呼び戻された形の田村が入っているのも注目に値します。
 
BKのリザーブは、SHとSOにそれぞれほぼ専属という選手を置いているので、ポジション対応の柔軟性には乏しい感があります。ゲイツは一応CTB以外にWTBには対応できますし、先発のWTBファンデンヒーファーはFBにも対応可能ではありますが。
不測の事態への対応、あるいは戦術的な交代という観点で、現状のチームはBKのユーティリティ性に少々難点があるような感じはします。
 
2日の試合よりは若干気温は涼しそうですが、その分雨の心配はありますね。
前の試合は意図的だったのか前半飛ばしすぎた感はありましたので、80分のマネジメントをどう考えるかが見どころの一つと思います。
 
一方のフランスは、先日もう少し初キャップの選手が増えるのではと書きましたが、先週とほとんど顔ぶれが変わりませんね。
FBの先発が初キャップ、リザーブで一人ですか。
キャップは安売りしないということなのでしょうか、代表デビューは簡単ではないようです。

フランス代表第1戦 試合所感

7月2日(土)に豊田スタジアムで行われた日本代表とフランス代表の第1戦は、23対42のスコアで日本代表は敗れました。

 

筆者はこの試合を現地観戦しました。
購入したのはバックスタンド側の3階席。試合中のほとんどの時間帯で日陰ではありましたが、座っているだけで汗が吹き出してくるような暑さです。

前半終了時は13対13のスコア。
前半は善戦したとか、前半のアタックは割と機能していたとか論評することは的外れとまでは言えないと思いますが、現場で見ていた感想としては、フランスが酷暑のなかの80分のゲームマネジメントを意識してか、前半はやや省エネ気味のプレーが多い印象だったのも事実。

一方のジャパンは、この試合はロングキックを極力封印する戦術を採用していたと思われ、ボールを動かすプレーが多かったため運動量が多くなっており、また相手の重量感のあるキャリーを止め、強烈なタックルを受けていたこともあって、前半から疲労の色がかなり濃い印象でした。
後半開始早々にフランスがFWを中心にメンバーを交代させ、ギアを上げた途端についていけなくなったのも、選手から感じられた疲労感を考えればやむを得ないような感じはします。
 
この日のコンセプトとしては、ボールの保持率を上げて相手を動かして疲労を誘うという狙いがあったように思いますが、ボールを保持していた時間帯もそこまで効果的なゲインは多くなく、ボールの出しどころがなくなったところで強烈なタックルを浴びせられたシーンが多かったような印象。
WTBやCTBのショートキックも意図的な選択だったのだろうと思いますが、ディフェンスに差し込まれてから使っていたことが多く、あまり効果的ではなかったですね。
とはいえ、1.5軍といっても選手の地力はあちらの方が上なわけですので、2試合のうちの1試合で色々と試してみることは悪いことではなかったと思います。
 
この試合のフランスのメンバーは比較的代表のキャリアがある選手が多かったですが、次戦はおそらくノンキャップの選手の割合が増えるような気がします。
ジャパンの方も中途半端にベテランを使わないで、インターナショナルの経験を経験の浅い(有望な)選手により広く提供した方が中長期的には実りがあるように思っています。
 

フランス代表第1戦 登録選手 所感

7月2日(土)に豊田スタジアムで開催されるフランス代表との第1戦に臨む日本代表の登録選手が発表されました。

www.rugby-japan.jp


 


先発は先週のウルグアイ代表戦から、PR1枚、LO1枚、No8、SH、インサイドCTB、FBが入替。
このあたりは別に報道が出ているコロナ陽性者の発生も少なからず関係しているのでしょう。

リザーブに入った高橋は、代表候補には昨年から入っていましたが、出場すればようやくデビューということになりそうです。

諸々のコンディション不良の事情もありますが、リザーブに代表歴が長くない選手が多くなったので、猛暑が予想されるなか選手交代をどのようなタイミングで行っていくかが注目されます。

フランス代表も代表歴が浅い選手も多く、コンビネーションが熟成されているとは思えませんが、個々に馬力や技術がある選手は多いので、ディフェンスなどで個々の力量が試されるシーンは多くなりそうな気がします。
 
 
 

ウルグアイ代表第2戦 試合所感

6月25日(土)、ミクニワールドスタジアム北九州で開催された日本代表とウルグアイ代表の試合は、日本代表が43対7のスコアで勝利しました。

 

正直なところ、事前の予想からあまり驚きのない結果なので、さほどコメントすることもないのですが。

日本代表の方はNDSからいわゆる正規メンバーとなり、プレーの精度や強度は上がった状況。
一方、ウルグアイ代表、ロス・テロスの方は、面子は前戦から変わらないわけで、敗戦を受けて規律面や戦術面は再度見直したでしょうが、プレーを劇的に変えるということは難しかったようです。

日本代表は、あまり苦しい局面がなかったので、評価が難しいところですが、初出場の選手、久々に出番を得た選手は概ね及第点でしょうね。
スコア的には快勝の試合の割に、ペナルティが相当多かったのは反省材料になるでしょう。ただ、試合間隔が空いたので試合勘が乏しかったということもあるとは思います。

季節が反対の南半球からやってきたウルグアイ代表が途中から体力的に難しくなってきたのは前の試合と同じく。日本代表が安全運転したこともあったものの、スコアに差がついてきたのも後半からというのも想定どおり。順調といえばそうですが、面白さには欠ける展開ですね。

6月に代表戦をマッチメイクすることの難しさは先日書きました。
素人でもわかる事情を玄人のラグビー協会が知らないわけはないはずで、主力級が6月にシーズンが終わらないリーグに所属していて十分なメンバーを揃えられないことが予想できる相手との試合に、1万数千円の値札をつける協会の誠実性は問われるような気がします。
フランス代表とのゲームに同じ価格をつけるのであれば、ロス・テロスとのゲームは半分か3分の1ぐらいが適正だったのでは。とはいえ、彼らに罪があるわけではありません。

次戦のフランス代表は初キャップの選手がかなり含まれる構成ではあるものの、個々の選手の能力はあるチームなので、日本代表の地力が試されるのはこの試合になります。
 

ウルグアイ代表第2戦 登録選手 所感

6月25日(土)にミクニワールドスタジアム北九州で行われる日本代表とウルグアイ代表の出場選手が発表されました。
WTBで先発のファンデンヒーファーと、リザーブスタートのPR森川、LOワクァ、SOかCTBで出場するであろう李が出場すれば初キャップということになります。

海外出身選手でキャップを持っていない選手はとりあえず出場させておこうという意図を感じなくはありません。
ただ、ファンデンヒーファーは若干調子の波がありますが、国産のBK選手にはないサイズとキック力があり、WTBとFB(最悪CTBも)をカバーできる点は魅力です。
ワクァもSuper Rugby等、国際レベルのキャリアはありませんが、2mのサイズで機動力と運動量があり、バックローも務まるというほかの選手にない魅力がある選手。シニアレベルでの経験も浅いので、ディフェンス力がどんなものかという点が代表でプレーするための注目点でしょうか。伸びしろはある選手だと思います。
 
ノンキャップの選手だけ話題にしましたが、今回のウルグアイの来日メンバーと前の試合の彼らの出来で判断する限り、JJの基準に達するかどうかは別として、正直なところ誰が出てもそこまでシビアな展開にはならないのかなという印象です。

しかし、ロス・テロスは前の試合は愚直に身体を当ててくるシンプルな戦いをしていましたが、2戦目は戦術を変えて、キックなどを多用して意図的にアンストラクチャーな状況をつくる展開を試してくる可能性はあるかもしれません。

メンバー構成上日本代表のディフェンスの強度は前の試合よりは上がると思われ、同じような展開だとしたら彼らにもジャパンにもあまり実りのない試合になるような気がしますので、試合運びに変化を加えてほしいようには思います。