新リーグ参入要件について諸々思うこと

新リーグのフォーマットが発表されてから、昨年6月にNumber Webに掲載された、新リーグ準備室の谷口室長とラグビー解説者野澤さんの対談記事をあらためて読み返しました。

半年以上経っているので、多少考え方が更新されているところもあるかもしれませんが、ネット上で読めるものとしては、新リーグの考え方が一番理解できる記事だと思います。

 

記事中、チーム参入要件を説明している箇所があります。

谷口 新リーグ構想の続きで、2021年度のチーム参入要件についてですが、大きく分けて『競技』『施設』『組織』『法務』『財務』の5要件を提示しています。3年間は助走期間として考えていて、2024年以降は必達義務になります。

 まず『競技要件』については、世界最高峰のリーグにふさわしいトップチームを持ってくださいとか、育成プログラム・メソッドの立案、教育研修・メディカルケアを実施してください、ということです。

 2つ目の『施設要件』では、主に収容観客者数1万5000人を目処としたホストスタジアムを確保し、そこで最低50%のホストゲーム占有率を目指してください、とお願いしています。

 3つ目の『組織要件』は主にホストゲームのチケット販売・試合を自主運営できる体制を作り、ホストエリアとなる地域自治体との連係を書面で取り交わしてください、といった項目です。

 4つ目の『法務要件』としては、プロ選手には統一の契約書を用意すること。また企業チームの色合いも残すことになったので、正社員選手に対しては選手誓約書を提出してもらおうと考えています。

 最後の『財務要件』ですが、リーグも含めて財務の可視化をすることに加えて、サラリーキャップ制度を導入したいと思っています。 

 

最後の『財務』は、傍からはわからない要素なので置いておくとして、ほかの要件について考えてみます。

サラリーキャップについては、別のところで整理してみたいと思います)

 

『競技』、『組織』、『法務』。

いずれも満たすのが簡単と言うつもりはもちろんないですが、ある程度費用をかけて、それが実行できる外部人材を集めたりすれば、達成できなくはない要素だろうと考えます。

新リーグに参画するチームの母体は、ほとんどが大企業であり、社内から公募することもあるいは可能でしょうし、Jリーグ発足以降、プロ野球の地域密着化、Bリーグの誕生など、日本でもスポーツビジネスを担える人材のストックは確実に増しつつあります。

 

そのなかで、もっとも満たすのが難しいのは、『施設』でしょう。

ホームスタジアムは、動く金額が大きすぎるので、チーム個々の努力ではどうにもならない要素が大きい。既存のスタジアムを利用できるところもあれば、新たに用意しなければならないような地域もあって、地域差も大きい。

 

ただ、先の対談記事のなかにもありますが、「日本ラグビーフットボール協会から独立したリーグ運営」や「チームによる試合興行、地域に根ざした普及」を目指すうえで、スタジアムの持つ意義はとても大きい。

この点は、先行事例のJリーグの取り組みも大いに参考にしたことでしょう。

 

ホームスタジアムの各チームの検討状況について別記事にまとめました。

準備室の理念を共有したということなのだと思いますが、自チームでできる限りの努力をしている(だろう)チームがかなり多いという印象です。

地域事情もあって悩ましいところですが、リーグの中長期のブランディングという観点からすると、好条件のスタジアム(専用球技場、収容能力、立地など)でホストゲームを開催する準備を整えたチームが、ディビジョンの審査上で高評価されるのは当然のことと思います。


純粋な競技以外の要素という点では、地域性も考慮しなければなりません。

新リーグの始動時には、チーム拠点の地域バランスも少なからず考慮されるものと思われます。


マーケティング的に、ラグビーが盛んな九州にディビジョン1のチームが一つもないというわけにもいかないと思うので、九州でトップになったチームはほぼ当確なのではないでしょうか。

要件は満たさないまでも収容人数10,000名のスタジアムを現時点で確保できる、宗像サニックスがその筆頭候補になるでしょうね。

 

同じくラグビーが盛んな関西。

神戸製鋼は確定と言っていいですが、大阪にも1ないし2チーム欲しいところなのだろうと思います。
この点でC大阪と連携して桜スタジアムが確保できる(予定の)NTTドコモは、こちらもよほどひどい成績でない限りはディビジョン1に入る可能性が高いとみています。
同じく、花園ラグビー場を確保し、地域に熱狂的なファンを持つ近鉄は、新リーグにとってできればディビジョン1に欲しい存在でしょう。

谷口室長は近鉄に縁が深い人ですし、あまり露骨に下駄を履かしたように見えるのもよくないでしょうから、ベスト16以内に入れば十分可能性は高いのではないでしょうか。準々決勝の手前で神戸製鋼に当たりそうなので、その先は難しいかもしれませんが。

 

TL最後のシーズンは、新リーグでの各チームのホームと思われるところでも多く実施されます。

コロナの影響もあって集客の事情は簡単ではないですが、集客のチームの努力についても評価対象になりえるでしょうから、最後のシーズンを新たなリーグへの助走期間として捉えると、色々と興味深い見方ができそうです。