トップリーグ2021 第7節 全体所感

TL最後のシーズンのリーグ戦最終節。

www.top-league.jp


結果については、登録メンバー発表時の見込と異なる展開の試合も結構ありましたね。

8試合中、終了間際に逆転になるクロスゲームが2試合、30点差以上の大差が5試合と極端な結果となりました。

 

NTTドコモ神戸製鋼

メンバー発表のときに、ドコモは勝利を半ばあきらめているような布陣と書きましたが大変失礼しました。残り1分ほどボールを保持できれば勝てたという試合で、最初からあきらめるなどとんでもなかったですね。

名将アッカーマンHCはTLの外国籍選手の起用枠をきわめて意識的に考えている指揮官だと以前に書きましたが、この試合ではサイズのある二列目、三列目の選手を入れてこなかったので、プレーオフも見越してローテーションの意図が強いのかなと感じたわけです。PRのファン・ヴィックの起用は残念ながらそこまで効果的ではなかったものの、FBにマーシャル、リザーブにSOバンクスを入れた効果は大きかったように感じます。強いFWがもう一枚いればボールを保持して守りきれたかなという気もしますが、さすがにそれはたらればですね。

最後の最後で逆転はされたものの、昨年97点差で敗れた相手に2点差の敗戦。負けはしたものの、手応えを新たにした選手は多いでしょう。

神戸製鋼はどこが悪いとも言いにくいですが、メンバーの固定がないこともあってかしっくりきていない感はあります。2週間の準備期間を活かしてノックダウンステージに向けた準備が必要でしょうね。

 

パナソニックヤマハ

最初の竹山のトライになったパントのキャッチミスは誤算だったと思いますが、ボールが大きく動く展開のゲームにしてしまった時点ヤマハの勝機はなかったかなという試合でした。

前半のうちに21点差を9点差に縮めて意地は見せたもののそこまででした。後半最初のスコアがヤマハであれば、ここまでの大差にはならなかったかもしれませんが、これもたらればですね。

パナソニックは順調すぎる形でリーグ戦を終えました。本来であれば前節の神戸製鋼戦が密度の濃いゲームになるはずが、悪天候でそういう試合にならなかったので、強度の高いと言えるゲームを経験しないまま終わってしまいました。それだけチームが充実しているとも言えますが、ノックダウンステージではちょっと不安材料になりますね。

 

リコー・日野

試合の入りの時間帯の出来がすべてでしたね。リコーが最初から圧力をかける狙いだったと思いますが、日野はその波をまともに被って、早めに失点を重ねてしまい難しい試合になりました。地力の差と言ってしまえばそれまですが。

リコーは最終的にはカンファレンスで4位。試合を重ねるうちにSOアイザック・ルーカス中心のアタックも機能してきて、チームのスタイルが完成してきた感がありますね。

日野のプレーオフ初戦は清水建設。戦力差を考えれば負けることは想定しづらいですが、その次も見据えて戻ってきた海外出身者の戦力をどう配置するか再構築が必要かと。

 

Honda・三菱重工

この試合も見込み違いの結果でした。点差ほどの実力差はなかったと思いますが、一勝にかけるHondaの意地が三菱重工を上回りましたね。

今シーズンのHondaはFWを中心に前に出られればいい試合ができるのはわかっていましたが、空回りすることも多かったので。この勝利によってTCL組との試合を回避しバイウィークができたので、さらなるチーム強化を図ってほしいところです。

重工は前半25分に退場者が出て一枚減ったのもあって対抗できませんでした。それにしても無抵抗でやられすぎですね。このチームはやられ出すと踏み止まれなくなる脆さがあります。この負けでプレーオフが1試合増える方に回ってしまいましたので、週末までに立て直しが急務です。

 

サントリーNTTコム

NTTコムは、前半の45対10からよく14点差まで詰めたと言うべきですが、最終的にはもっと差を付けられてしまいました。残念ながら一発のタックルミスでトライまでいってしまう、TLでよく見られる失点シーンが量産された試合でした。NTTコムはアタックの形はある程度整っていると思いますが、組織的なディフェンスを整備しないと上位陣には歯が立ちそうもないですね。こういう展開の試合をやっているとSHレイドローも持ち味を発揮できない

サントリーは、力のあるランナーがつくった穴をうまく使ってトライを量産しました。ドコモのペレナラはクロスゲームも含めてプレーをエンジョイしているように思えますが、バレットはリーグ戦で接戦と言えるのが7試合のうち2つのみという環境をはたしてどう見ているのか。そこで手を抜くような選手でないから、彼が出場したあとの20分間で5トライが追加されたとも言えますが。

新リーグは(も)、チーム強化は各チームの自助努力にお任せ、という雰囲気が漂っていますが、カンファレンスの1位と4位の対戦で63点差がつくラグビーのゲームがエンタメとして市場価値を持ちうるのか、よく考えた方がいいと思います。

 

トヨタ・クボタ

結果だけを見れば間違いなく接戦であるし、劇的な試合であったことも確かなのですが、双方にペナルティ、技術的なミス、判断ミスがかなり多く、ハイレベルな試合だったかと言われるとそうでもないかなという印象。

レベルの高いプレーも多く、カンファレンス2位を争うにふさわしい試合ではあったと思うものの、ちょっと首をひねってしまうような内容でもありました。

トヨタは相手が2枚少なくなった時間帯のアタックにもう少し工夫ができなかったかと思いますし、クボタの最後の選択は、キックを外す恐れもあった割にはトヨタの最後のアタックを待ち構えるディフェンスの体制が実に淡泊だったような気がしますね。

厳しいことを言うようですが、新リーグのレベルを高めるには両チームの立ち位置のチームが戦術的な水準を上げていくことが必要だと思います。

 

サニックス東芝

サニックスは序盤はよい試合をできたものの、途中で息切れした感があります。一試合を通じて一貫したプレーができなかった点がカンファレンス最下位という結果に表れていますね。人のリソースが限られているチームで、怪我人も続いて難しい状況です。来季活動縮小の報道も出て、さらにチームは難しい局面にあると思いますが、近鉄との試合では今季の集大成を見せてほしいですね。

東芝は後半ゲームの強度を上げてきましたね。連勝でリーグを終えましたが、この2試合はやりやすい相手と対戦したのも事実。今シーズンの真価は次のリコー戦で見えると思います。

 

キヤノンNEC

NECについては同じような試合展開が続いていますが、序盤であっさりと試合が決まってしまいました。ディフェンスでの連係不足、タックルの弱さなど、チームとしての欠点は自覚があると思いますが、もともと人のリソースが足りないチームなので根本的な修正は難しいですね。後半にいくらかトライを取り返すのも過去と同じで、チームとして完全に気持ちが切れていないのはよいとは思いますが。TCLトップの織機との対戦で意地を見せてほしいところです。

キヤノンはチームが出来上がってきて、調子を上げてリーグを終えた感があります。ただ、リーグ戦の前半より後半の方が与しやすい相手が多かったのも確かなので、プレーオフでは今シーズンの真価が問われます。前節の日野戦は試合が実施できていれば、勝ち点4か5を加えられたと思いますので、この点は気の毒でした。