新リーグに関する現在地について思うこと

新たにプロリーグを立ち上げるとぶちあげて、それが頓挫し、実質的には現状のTLのマイナーチェンジでありながら、変化したところを色々と演出しなければいけない悩ましい状況にあるのが新リーグ構想の現在地です。

 

JリーグBリーグのように、すべてをプロ化するならば、やるべきことはまだシンプルだったでしょうが、新リーグではチームの法人化を必須としなかったため、プロ志向のチームと、従来どおりの企業チームが混ざり合うであろう、同床異夢もいいところの体制で始動しないといけないところに難しさがあります。

 

少々前に発表された記事ですが、球技ライター大島和人さんの、Bリーグの前チェアマン大河正明氏のインタビューをもとにした新リーグに関する記事は、最近各種メディアで頻出している新リーグ準備に関する問題点を整理したものとなっています。

news.yahoo.co.jp

 

とはいえ、大島さんもわかったうえであえて書いているような気もしますが、ところどころ突っ込みどころがあるように感じますので、記事を引用しながら、現状個人的に考えるところを書いてみようと思います。

 

ラグビー世代」が現役のうちにサステナブルな仕組み を作っておかないと、より悪い条件の後ろ向きの変化となる可能性が高い。代表ビジネスのポテンシャルを活かして改革のインセンティブに使いつつ、可能な限り早く改革を実現させる。それが大河の主張だ。

2つ目のポイントは企業との向き合い方だ。新リーグの立ち上げに向けた大きなハードルが企業との関係で、カテゴリー分けに関して企業の反発があるという報道もされている。競技力だけで1部から3部までの割り振りを決めるならば単純だ。ただ事業性や社会貢献、地域密着のような「数字で測りにくい」ポイントでチームを評価することは技術的に難しい。低評価を受けた側は当然ながら反発をする。

 「サステナブル」な仕組みをつくろうと模索したうえで、従来のTLで義務ではなかった、社会貢献や地域密着、アカデミーなどの「数字で測りにくい」、競技普及に関する諸々の要素を各チームに課したわけです。

そもそも各チームの取り組みをポイント化する審査があること自体は事前のアナウンスがあったでしょうし、TLとの差別化のためもあって、「数字で測りにくい」社会的な取り組みを加えるという新リーグに関する考え方は、今までにもそれなりの頻度で説明が行われているはずです。

考え方に100%納得したかどうかは別としても、新たにアカデミーを設立したり、SDGs的な取り組みを始めたりしているチームもあるわけです。

ディビジョン1の数を現状のTLのチーム数16よりも絞るということも事前に伝えられていたでしょう。

現状の審査の順位に文句をつけているようチームは、ディビジョン1に入れそうもないか、当落線上にいるところであろうと思われるわけです。

まあ思っていたよりも競技以外の要素の配点が高かった、というようなことはあるかもしれませんが、自チームがトップカテゴリーに入れなさそうな状況が出てきたからといって、今更泣き言を言うなよというのが個人的な感覚です。

新しい取り組みを始める際に反対意見が出るのは当たり前で、組織でコンセンサスをとって決めた方針がある以上、その意見に過度に反応する必要はないと思いますね。理屈としては。

 

ラグビーの新リーグ立ち上げを見て、危惧を感じるのは企業へのリスペクト 欠如だ。ラグビー界の未来を明るいものにしよう、ファンを楽しませようという大義は極めて重要だ。一方でチームのオーナーは企業で、彼らは選手を雇用し、施設面でもこの競技を支えている。ファンや選手のために、企業が“仲間”でいてくれる状況を維持しなければならない。

リスペクトを欠いているわけではなく、「企業が“仲間”でいてくれる状況を維持」するために、法人化を義務としないなど一定の配慮をしているのだと思います。

前準備室長の谷口氏も、ラグビー仲間が極力脱落しないようにしたい、とあちこちのインタビューで散々言ってましたしね。

 

バスケは2015年の改革の時点で、B1からB3までのカテゴリー分け審査に参加した47チームのうち、37チームがプロだった。企業チームは少数派だったわけだが、それでもバスケ協会の川淵三郎会長(当時)や理事だった境田正樹弁護士、そして大河は企業に対する細やかな気遣いをした。ラグビートップリーグに参加する全チームが企業チーム。なおさら企業の論理に寄り添う必然性 がある。

企業の論理に寄り添うだけであれば、現状のTLを変える必要はないわけです。

大企業におんぶにだっこ状態のTLが、経営環境等諸々考えると、「サステナブル」な仕組みではないという危機意識があったから、プロリーグ構想が持ち上がったのでしょうし、それを引き継いでの新リーグ構想になったのでしょう。

 

基本的に企業はチームの法人化を嫌がる。法人設立のプロセスが面倒という事情もあるが、「チームを潰しにくくなり、負担が固定化する」「プロ化で支出が増える」といった懸念を持っているからだ。逆に言うと「チームを背負いきれなくなっても新たなオーナーに引き継げる」「今以上にラグビーへの支援が増えない」という確証があれば、企業はトップリーグのプロ化とチームの法人化を拒否しないだろう 。

「仮にリーグをプロ化するならば、チームの法人化は必須だ」とこの段落の前に書かれているのですが、法人化を嫌がる企業があったから、新リーグ構想が中途半端な代物になっているわけです。

 

法人化で軌道に乗ったチームの事例が続けば、法人化の流れは加速するように思います。
本来であれば、少なくともディビジョン1は、法人化に前向きなチームだけで構成すればよかったのでしょうが、離脱チームが出ることを恐れて日和ったので中途半端になった感はあります。楽観的に見れば、法人化については時間が解決していくこともあるように思います。

 

鎖国政策はやめたほうがいいと思うんです。日本ハンドボールリーグに葦原(一正/元Bリーグ事務局長)が行ったのと一緒で、ラグビーにもそういう知恵を持った人が行けばいい。プロリーグ、トップリーグのトップはビジネス感覚が必要です。サッカーの人も結構そうだけど、ラグビーの人はラグビーが大好きですね。だからラグビーじゃない人の話を聞こうとか、そういう人を中に入れて本気で改革しようというのがない。そこは変えたほうがいい 」

ラグビーが外部人材を登用した実績がなかったわけではなく、サンウルブズDeNAベイスターズの初代社長だった池田純氏や、外資系金融から渡瀬裕司氏を招聘した実績がありますし、準備室長を務めた谷口氏も本来はアカデミシャンなわけです。

登用はしているけれども、権限移譲が十分でなく、効果が中途半端だというのは確かだと思います。

 

審査に関して企業から苦情があったから、協会の会長が「自分が決める」と発言したとか、さる理事が「谷口理事ではまとまらない」と言った、とかいうような記事も別にありましたが、協会内の正規のプロセスを経て決めたであろう決定事項に関してこのようなことを外部に漏らす協会の人間はいったい何を考えているのか。

おそらく何も考えていないのでしょうが、このガバナンス欠如、当事者意識の欠如ともいうべき協会の状況が、新リーグを進めるうえで足かせになるのでしょうね。

協会とリーグの責任範囲を早期に、かつ明確に切り分けることが肝要です。