ラグビーチャンピオンシップの行方
南半球の四ヶ国対抗戦、ラグビーチャンピオンシップ2021が10月2日に全日程を終えました。
一通り試合を見た感想としては、各チームの現在の地力云々を議論する以前に、チームのコンディションにだいぶ差があったなというのが正直なところ。
この記事では、試合そのものの中身ではなく、ラグビーチャンピオンシップのスケジュール上の問題点について書いてみます。
北半球と南半球のクラブ(リーグ戦)と代表のスケジュールを図示してみました。年によって若干のずれはありますが、概ねこのように流れていきます。
北半球 | 代表国際試合 | 南半球 | |
9月 | クラブ:欧州リーグ 開幕 (イングランド、仏、URC) |
代表:ラグビーチャンピオンシップ | |
10月 | クラブ:欧州リーグ | 代表:ラグビーチャンピオンシップ(~上旬) | |
11月 | クラブ:欧州リーグ | テストマッチ | |
12月 | クラブ:欧州リーグ | ||
1月 | クラブ:欧州リーグ | ||
2月 | クラブ:欧州リーグ 代表:シックスネイションズ(上旬~) |
クラブ:SR開幕 | |
3月 | クラブ:欧州リーグ 代表:シックスネイションズ(~下旬) |
クラブ:SR | |
4月 | クラブ:欧州リーグ | クラブ:SR | |
5月 | クラブ:欧州リーグ | クラブ:SR | |
6月 | クラブ:欧州リーグ 閉幕 | クラブ:SR閉幕 | |
7月 | テストマッチ | ||
8月 | 代表:ラグビーチャンピオンシップ(上旬~) |
URCは、アイルランド 4チーム、ウェールズ 4チーム、スコットランド 2チーム、イタリア 2チーム、南アフリカ 4チームが参加する国際リーグ、ユナイテッドラグビーチャンピオンシップのことです。
今シーズンから南アフリカの元SRチームを迎えるにあたり、従来のPRO14のフォーマットを改め新装開店した形です。
北半球と南半球のそれぞれの範囲内でクラブと代表の活動が完結していれば、長くはないまでもラグビー活動がオフの期間は存在します。
しかし、南半球の代表選手が北半球のリーグでプレーする場合、この話題では南アフリカとアルゼンチンのことを指しますが、休養期間がないサイクルに入ってしまうという問題が生じます。
昨年の3月、世界的にCOVID-19の感染が拡大し、南半球のクラブチームの競技フォーマットであるSRが中止になりました。
その時点で欧州でプレーしていたアルゼンチンの代表選手は少数派で、大半はアルゼンチンのチーム ハグアレスでプレーしていましたが、コロナ禍の状況で国境を跨いだ試合ができないハグアレスの解体は避けられず、代表クラスの選手の大半が欧州のリーグにプレーの場を求めることになりました。
アルゼンチン代表の選手の多くは、欧州の2020/21シーズンを終えた後、6月中旬以降に代表合宿に参加し、7月に欧州でテストマッチを3試合、その後南アフリカに移動して南アと2試合のテストマッチ(ラグビーチャンピオンシップのホーム&アウェー扱い)を戦いました。さらに豪州に移動し、NZ、豪州とホーム&アウェー扱いで計4試合を戦ったわけです。豪州入国時には検疫も交えて。
選手は欧州の所属先に戻ってから休養期間は与えられるはずですが、所属チームに合流してからは来年の6月までシーズンは続きます。その間の11月に秋のテストマッチ3試合(フランス、イタリア、アイルランド)を欧州で行う予定にしています。
さすがに11月のテストマッチには、この遠征に参加していないような選手も新たに起用して負担を分散するのではないかと思いますが。
それにしても、ロスプーマス(アルゼンチン代表)は2021年は年間12試合もテストマッチを行うのに国内の試合は1試合もないということになります。
南アフリカについても、今シーズンから元SRの4チーム(ブルズ、ライオンズ、シャークス、ストーマーズ)がURCに参加するため、大部分の代表選手が北半球のカレンダーに組み込まれます。
南アは日本でプレーする代表選手が若干名いるのでアルゼンチンよりは多少はましですが、フランスのTop14、イングランドのプレミアシップ、そしてURCに参画するチームの所属選手が大半ですので、今のアルゼンチンと同じサイクルに入るということになります。
南アも11月には3試合(ウェールズ、スコットランド、イングランド)としっかり予定が入っています。
強度の高いラグビーを一年間続けて、ほとんど休養期間もないということになれば、いくらタフな選手であっても身体がもつわけがないし、プレーのクオリティが維持できないと思いますね。
来年の8月ごろにコロナ禍の状況がどうなっているのかわからず、今回のようなセントラル方式か、以前のようなホーム&アウェーかもわかりませんが、いずれにしても北半球のカレンダーに組み込まれた南アフリカとアルゼンチンがこの時期に6試合のテストマッチを行うのは持続可能な仕組みではないような気がします。
四ヶ国の代表選手がほぼすべてSRでプレーしていた時期であれば合理的なフォーマットだったでしょうが、南アフリカとアルゼンチンがSRから完全に離脱した以上、代表の定期戦のあり方もやはり考え直さざるを得ないのではないかと思います。
金銭的な契約問題など一筋縄ではいかないのでしょうが、両国がシックスネイションズに合流する方向がスポーツ的には妥当なのでしょうね。