日本代表 VS イタリア代表 試合所感

7月21日(日)に札幌ドームで行われた日本代表とイタリア代表の一戦は、14対42のスコアで日本代表が敗れました。
エディ・ジョーンズ新体制でのテストマッチは三連敗となりました。
 
このシリーズの他の対戦相手はほぼ日本対策をしてきていない印象でしたが、イタリアはしっかり対策を準備してきたと思われます。
地力が上のチームに対策を用意されたら、ほとんどできることはない、という典型のようなゲームでしたね。
 
イタリアも途中かなり疲れたような時間帯もありましたが、他のチームが暑さもあってかほとんど使わなかったコンテストキックも交えてきたのは、矢崎などの経験値が乏しい若い選手にとってはよい経験になったかもしれません。
 
ほぼ熱帯の7月の日本でマッチメイクしても、冬のゲームとはスピード感がまったく別のスポーツになります。先週日本で試合をしていたジョージアも冬の豪州に渡ったら、BKの躍動感がまったく違いました。
この時期に国内で試合数を重ねても得られる経験は限定的だと思いますので、興行はほとほどにしておくべきということですね。このシリーズはチケットの価格設定も含めて、商売っ気が前面に出過ぎたという気がします。
 
さて、シリーズの成果が芳しくなかったとはいえ、新体制に見切りをつけるのはまだ早いと思います。一般論でいえばですが。
 
ヘッドコーチがすべてのプレーの指導をできるわけもなく、チームを強くするにはアタックやディフェンス、スクラムラインアウトなどの専門性を持つコーチが必要です。
新HCが性格的に面倒くさい人物であることがすでに世界中に知れ渡っているからなのかわかりませんが、現在のコーチ陣を形成するのにもだいぶ苦戦しました。
同HCのもとコーチが頻繁に入れ替わっていた過去を考えると、今後も同じコーチ陣で継続できるかどうかは何とも言えず、エディ氏がHCを務めることのリスクはこの点にあります。
 
起用メンバーを途中変えたとはいえ、一ヶ月半ほど移動もなく国内で合宿を続けて、5試合消化したチームの完成度をどう評価するか。
プレー精度に疑問を感じるようなシーンも多く、アタックなど基本的な型はできた部分もあると思いますが、はたしてこれからどれだけの伸びしろがあるのか少々疑問ではあります。
 
まだチームビルディングの途中とかなんとか言っていて、あっという間に2027年がやってくるような感じはします。
 
 
 
 
 
 

日本代表 VS イタリア代表 登録選手 所感

7月21日(日)、札幌ドームで行われる日本代表とイタリア代表の試合登録選手が発表されています。14時5分のキックオフです。

 

www.rugby-japan.jp

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ドームなので外よりは過ごしやすいだろうという触れ込みですが、実際はどうでしょうか。昨年のWC前のテストマッチではかなり蒸し暑かったという感想もあったようですが。

 

お互い7月のテストマッチは最後の試合。日本は少し休んでからパシフィックネーションズカップの準備に入るのだろうと思いますが、イタリアの選手は終わったら次の欧州のリーグ戦の準備に入る前にしばしバカンスに入るという感じでしょう。サモア、トンガからの日本という太平洋を縦断するツアーを勝って締めくくりたい気持ちは強いと思われます。

 

日本は前の試合のレッドカードの影響もあるでしょうが、SHに小山が入り、リーチはLOからFLへ、そのLOには桑野が入りデビューということになります。

SOは久々に松田が入りました。次のシーズンの移籍が決まっていますが、ワイルドナイツで親しんだハーフバック団ということになりますので、うまく試合に入れるかがポイントになりそうです。

 

イタリアは寒い地域から移動してきたわけではありませんが、日本の蒸し暑さは別でしょうから、ひとまずテリトリーを意識した戦いをして消耗を避けようとするのではないかと。

FWが弱いわけではありませんが、ジョージアほどフィジカルバトルにこだわりをもつチームではなく、BKがすばやく展開し、スピード感のあるフィニッシュに特長があるチームです。

CTBのメノンチェッロとブレックスは前に出る力が強く、そこで崩されると厳しくなるので、対するトゥアとライリーの働きが肝になるかなと思います。

 

 

 

日本代表 VS ジョージア代表 試合所感

7月13日(土)、ユアテックスタジアム仙台で行われた日本代表とジョージア代表の試合は、23対25のスコアで日本代表が敗れました。
第2期エディ・ジョーンズ体制初勝利ならず、ということです。
 
序盤の猛攻で幸先よくトライを取ったあたり、ジョージアもコンディションが不十分だろうからそれなりにトライを重ねられるようにも思いましたが、そうはなりませんでした。
 
また同じパターンかという気もしますが、ボールを速く動かそうとするだけで、人やボールの動きが大きくないから、ディフェンスの側も徐々に慣れてくるのでしょうね。
このあたりチームビルディングのうえで指揮官が意図していることなのかもしれませんが。
 
一発で前に出られるペネトレイターが多くいれば、速い球出しも効果が出てくるでしょうが、それを期待されたタタフはフランスのシーズンが長かった影響からかフィットネスが今ひとつな感じでした。
 
下川がレッドを取られたクロコダイルロールは、前の試合に同じプレーで山本がイエローを出されているわけですから、チームとして学ばなければいけないところです。
 
勝利には至りませんでしたが、国内に留まって一ヶ月以上もトレーニングしている効果か、チームの型はある程度できてきた感じはします。
あとは、一つひとつのプレーの精度を上げていくこと、オプションプレーの選択肢を増やすこと、あるいは居住資格を満たしたより強力な選手にリプレースしていくこと、となるのでしょうね。
 
この試合のジョージアは、気象条件もあったでしょうがアタックは極めてシンプルでした。
次に当たるイタリアはもう少し工夫のある仕掛けをしてくるでしょうから、ディフェンスの現在地も確認しておきたいところです。
 
 

日本代表 VS ジョージア代表 登録選手 所感

7月13日(土)に宮城・ユアテックスタジアム仙台で行われる日本代表とジョージア代表の試合の登録選手が発表されています。
キックオフは19時5分と遅めです。
 
 
直近2週間のマオリオールブラックスの試合とは違い、この試合はテストマッチですので、現状呼べる選手のベストメンバーということなのでしょう。
リーチのLOでの起用と、フランスでのプレーで一皮むけたタタフの存在が目を引きますね。
 
 
ジョージアはフランスでプレーする選手と国内ベースのブラックライオンでプレーする選手が概ね半々というチーム。選手選考に際してはゴタゴタがあったようですが。
BKにも走力がある選手がいて、かつてのようなスクラム中心にFW勝負一辺倒のチームではないですね。
とはいえ、FW中心のフィジカルバトルがやはり勝負の肝になるでしょう。
 
日本は先週JAPAN VXとしてマオリオールブラックスに勝ちましたが、テストマッチとして新体制の初勝利をあげたいところ。
 
一方のジョージアもWC後にヘッドコーチが交代しています。
先週ホームでフィジーに敗れてからの来日。7月のテストマッチで少なくとも一勝はしたいと考えているでしょうが、来週が豪州に乗り込んでの試合ですので、この試合を重要と位置付けているかと思います。
 
先週のゲームと比べれば気温の状況はまだマシなようなので、好ゲームが期待できそうな気がします。

JAPAN VX VS マオリオールブラックス 第2戦 試合所感

7月6日(土)に秩父宮ラグビー場で行われた、JAPAN VXとマオリオールブラックス第2戦は26対14のスコアでJAPAN VXが勝利しました。
 
マオリオールブラックスから日本チームが初勝利ですので、歴史的勝利という表現もあながち間違いではないと思うものの、レベルという点ではちょっと首をひねりたくなるような試合内容ではあります。
これがクライストチャーチダニーデンあたりに遠征した試合であれば別なのですが。
 
あまりコンディションの話ばかりするのもよろしくありませんが、マオリ側の前半から疲労困憊した様子を見ているとどうも、という気はします。
前の試合から一週間経過し、蒸し暑さにも多少は順応できたかと思っていましたが、30℃超、湿度50%超の環境でラグビーをプレーしたことがないような人たちには無理な相談だったようです。

日本側に無理な攻めをしなくなった、得点機を確実に活かしたなど、前の試合から幾つかの改善点はありました。
ただ、簡単なパスをノックオンする、ディフェンスラインに戻れない、キックチェイスがろくにできないNZチームなどはほとんど見たことがないので、そもそものマッチメイクに無理がありましたね。
 
スポーツ、特に球技は相手との相対的な関係のうえで成り立ちますから、マオリ側がこういう状況であると、日本側のどの選手がよかった、どのプレーが効果的だったなどと言及しても詮なきことという気はします。
日本側が炎天下でハードワークできるだけのトレーニングはできているとは言えますね。
 
7月のテストマッチシーズンは、北半球の国が南半球に遠征するものであって、逆というのはやはりラグビー的には意味がありません。興行面を除けば。
 
一試合の成果を喜ぶのは人の感情なので当然理解はできるものの、本心で喜んでいる選手がいたとしたら厳しい言い方ですがラグビー選手として伸びしろがないでしょう。
同時期に南半球で行われているテストマッチとは、テンポや強度がまったく別物であることに思いを巡らさないといけない。
 
残りのジョージア、イタリアとのテストマッチは、世界ランキングのポイントのことを別にしたとして、スポーツ的に実りあるものにするには、多少は涼しい気象条件になっていることを期待したいところです。
 

いまさらフランス大会 日本代表振り返り

フランス大会が終了したあとに書いたものを投稿するのをすっかり忘れていましたが、現在代表活動中ということもありますのでこのタイミングであげておきます。
日本代表の強化に関するざっくりとした課題をまとめたものですが、考えは基本的に変わっていません。
 
 
まず、日本代表の終戦時にも書いた感想ですが、欲を言えばきりがないもののこの大会で日本代表は現状の力は出し切ったと思います。

第3戦のサモア戦に勝利したあとの、ジョセフHCの満面の笑顔が印象的です。

もちろんベスト8以上を目指してはいたでしょうが、チームの現在の力量を考えれば、次回WCに自動出場できる3位以内を、自分のレガシーとして何とかクリアしたい現実的な目標と捉えていたがゆえの安堵の表情だったように感じられます。

 

試合後に掲載された各種の記事によると、ベスト8進出という目標を達成できなかった理由としてCOVID-19の影響により代表強化の始動が他国よりも遅かったことを挙げる業界関係者が多かった印象です。

方便としてはわかりやすく便利なのでしょうが、前回大会からヘッドコーチもアタックコーチも継続しているチームにおいてそれを言い訳にするのはねという気はします。

ヘッドコーチが交代して新しいコンセプトのラグビーをやろうとしていた矢先に代表活動が制限された、というのであれば機会ロスを嘆くのも理解できるのですけどね。

 

業界関係者が代表活動の機会ロスの影響が大きいと感じるのは、国内リーグと国際試合のレベルが別物だと自覚しているからです。

国内リーグで活躍=国際レベルにも適用、というわけにはいかないから選手を色々試す必要がある  ⇒  その機会が1年以上失われ結果的にチームの底上げが遅れた

このような図式ですね。

 
ハイレベルなチームとのテストマッチ機会を増やすことを課題として挙げる関係者も多く、それはもちろん重要な要素の一つですが、ベースとなる競技力を底上げせずに試合の機会だけ増やしても実質的な意味は乏しいというのが個人的見解です。
 
現状の国内リーグであるリーグワンは、有名外国籍選手が大挙来日し、活況を呈している風になっていますが、優勝を争うチームが勝敗がどちらに転ぶかわからないようなヒリヒリした試合を経験するのはせいぜいシーズンで3、4試合程度というのが実情です。
クロスゲームの割合をもっと増やさなければ、テストマッチで本当に活躍できるような人材は育ちません。
たとえばワイルドナイツがあまり精度の高くないハイパントを蹴ったとして簡単に再獲得できるような試合ばかりをやっていては、日本代表の水準は上がらないということです。
 
トップリーグ時代の16チームから12チームになったことで、一方的な試合は減った印象ではありますが、トップカテゴリはもう少し絞って8チームぐらいにして強い者同士の試合数を増やす方向が望ましいのでしょう。
リーグの仕組みが、参加する企業を極力減らさないように設計されているというのはわかりますが、昇降格の入替を活発にしたり、上から2番目のカテゴリも競った面白い試合を増やしたりなどリーグ戦が盛り上がる工夫をするならば、そこまで離脱チームは出ないのではないかという気はするのですが。
 
さて、代表のヘッドコーチに求められる仕事は一般的に以下のようなものだと思います。
 ①コーチの戦術を実践できる選手の選定
 ②戦術の落とし込み

 

しかし、日本代表のヘッドコーチは、国内リーグと国際試合のレベルの乖離もあるので、加えて以下のような仕事もしなければなりません。

 ③国際試合に適応できる選手の見極め
 ④国際試合に適応できる基本スキルの習得
 ⑤国際試合に適応できるように肉体改造の推進

 

もちろん、程度の差はあれ他国のコーチもやっていることではあるのですが、日本の場合はこの後者の部分のウェイトがきわめて大きい。

これ全部をやっていたら、主力15名+αの選手を揃えて鍛えるのがやっとで、とても33名(前回大会までは31名)は質が整わない、というのがジョセフ氏の本音だったでしょう。

 

SRに参画していた時代のアドバンテージは今大会でほぼ使い果たしたと思います。

日本代表候補と別に、選手発掘、育成のためのA代表の活動を同時期にダブルオペレーションするぐらいしていかないと、代表の競争力を維持していくのは厳しいのではないかと考えます。

 

 

 
 
 
 
 

JAPAN VX VS マオリオールブラックス 第1戦 試合所感

6月29日(土)に秩父宮ラグビー場で行われた、JAPAN VXとマオリオールブラックスの第1戦は10対36のスコアでJAPAN VXで敗れました。
 
夜の時間帯のキックオフだったのは、季節が反対の南半球から短い準備期間で来日するマオリ側への配慮だったのだろうと思いますが、秩父宮のナイターは相変わらず見やすくはないですね。
 
試合に関しては予想していた展開から、半分当たって半分外れましたね。
 
まず、マオリ側は即席チームではあるものの、NZチームには即興で打開する力はあるので、オフロードやキックなどを駆使して、またアンストラクチャーの機会をうまく活かしてトライの形はいくつかつくるだろうと。結果6トライ。これは当たりました。
 
一方で、相手は即席チームゆえディフェンスラインの準備は整っていないので、日本側が準備したアタックでビッグゲインするシーンをいくつかつくり、取られはするがこちらも取り返すスコアが大きい試合になるだろうと。これは外れでしたね。2トライ。スコアとしては差がつきました。
 
大きくゲインしたプレーはいくつかあったものの、連携が今一つでなかなかトライを取り切るまでは至りませんでしたね。
全員が初代表というわけではないのだから、特別なプレーはいらないので普通にボールを活かすような戦い方を見せてほしかったと思いますが。
 
特に慌てる必要がない状況でプレーを急いでしまうのはリーグワンにもよく見られる日本ラグビーの課題ですが、そのような状況をあえてつくらせている新指揮官の意図があるのでしょう。
ただ、終盤ピッチサイドに降りてきたエディ氏の表情は余裕がなさそうにも感じたので、彼の想定以上にアタックが機能しなかったような気もしますが。
 
スクラムは上出来でしたが、マオリ側もまともにスクラムを組む練習はできていなかったと想像しますので、2戦目の出来も見たほうがよいかなと思います。
新体制が立ち上がったばかりという段階ではあります。
結果を求める状況でもないとは考えますが、指揮官の意図が見えてくるようなゲームを期待したいところです。