カテゴリーを便宜上「ワールドカップ」としましたが、この投稿はどちらかというと、球が丸い方のフットボールのワールドカップに関する話題です。
筆者はラグビーファン歴はそれほど長くなく、それより前の1990年代後半から2010年代前半ぐらいまではサッカーの方に関心がありました。
そのころのワールドカップやヨーロッパ選手権はほぼ全試合を見ていましたね。
最近はサッカーの方の試合を見る機会はめっきり減っていたのですが、久々に先日、ワールドカップの日本代表とドイツ代表の試合を見ました。
試合自体は周知のとおり、日本代表が2対1で逆転勝利を収めています。
この試合を見ていて、以前から感じていたサッカーとラグビーの似た点と異なる点についてあらためて思いを新たにしました。
サッカーやラグビーに限った話ではありませんが、スポーツにおけるアップセットは、弱者側の努力と強者側の不出来が交わるところで起こります。
この試合では、前半劣勢だった日本代表が後半途中からアタック要素が強い選手を続々と投入していった戦術がハマった、というのは各種メディアで散々報じられ、それはそのとおりだろうと思います。
ただ、この場合の強者、ドイツの方の不手際にも言及しないと話としては不十分です。
前半、ドイツが圧倒的にボールを支配していました。このレベルの試合で一方のチーム(日本)に攻撃の機会がこれほどまでに少ないというのは稀なほど。
それでいて、優勢だったドイツの得点はPKによる一点のみ。後半に入っても15分ぐらいまでの間にドイツの決定機は3、4回はありました。
大会ごとにタイトル争いに絡んでいたときの強いドイツであれば、試合開始60分ぐらいまでに少なくとも3点は取っていたはずです。
もしそういう展開になっていれば、いくら途中から日本が采配で努力、工夫したとしても、試合を締めにかかったドイツ相手に逆転を収めることはきわめて難しかったでしょう。
そうした展開にできなかったこの日のドイツのアタック陣の不出来が番狂わせが起こった大きな要因となっています。
ドイツとしても、本来のエース格であるティモ・ヴェルナーがシーズン中の怪我で出場不可となり、才能豊かなレロイ・サネも大会にエントリーはしているものの、この試合は直前の負傷で不在。
この両者も、往年のミロスラフ・クローゼのように、ここぞの場面でゴールを決める点取り屋というタイプの選手ではないですが、欧州の一線級でプレーしてきたキャリアのある選手たち。この試合の途中までのように圧倒的にチャンスに恵まれていた状況であれば、いくらかの結果を残した可能性は高かったような気はします。
このように、いささか不運な状況がドイツにあったことも事実でしょう。
ラグビー日本代表における最大のアップセットは、言うまでもなく2015年ワールドカップの南アフリカ戦です。
この試合のための日本側の準備は多くのメディアで言われてきたとおりです。スカウティングの達人、エディ・ジョーンズが緻密に準備を積み重ねていました。
ただ、この試合に関しても、強者の南アフリカの方に不手際がありました。
明らかに日本の戦術への対策は不十分で、選手起用に関してもベストメンバーとは到底言えず、かなりの油断があったのは確かです。
日本がベストを尽くしたとしても、強者の南アフリカが対策を怠らなかったとしたら、同じ結果が起こったかはきわめて疑わしいところです。
一方、サッカーとラグビーの間で異なることをあらためて感じたところ。
この二つの競技はルーツを同じくすることもあって、ボールを動かして陣地を取り合うことが基本要素となる点は同じです。
ゲームの中に流れがあって、自分たちが優勢なうちにスコアに変えておかないと、せっかくの流れを失う傾向が強いことも共通でしょう。
一方で、ラグビーは自分たちが敵陣で攻めている間に、相手のペナルティを獲得することができれば、トライまではいかなかったとしても、PGで3点に変えることは可能です。
サッカーのPKと違って、GKが邪魔をするわけではありませんし、キッカーが優秀であればかなり広範囲から得点を狙うことができます。
いくらボールを保持して攻め続けていたとしても、得点を奪わない限り自分たちが真に優位に立つことはできないということは同じですが、サッカーで得点することは明らかにラグビーより仕組みの上で難しいでしょう。
こうしたことも、サッカーよりもラグビーの方が番狂わせが起こりにくい理由の一つだろうな、とあらためて考えた次第です。