準々決勝 展望

準々決勝は、プールAとBの通過チームがサンドニ、CとDのほうがマルセイユで戦うことになっています。
各所で言われているように、今大会は組み合わせが決まったときのランキングの兼ね合いでAとBのほうに強豪が過度に集中してしまったので、サンドニがヘビー級、マルセイユはミドル級の対戦のような組み合わせです。
サンドニのほうは過去に例のないほど厳しいクォーターファイナルになっており、一方でマルセイユのほうもある意味実力が接近しているので興味深い顔合わせになっています。
 
準決勝ではサンドニの勝者とマルセイユの勝者が対戦することになりますので、準々決勝をサンドニで戦うチームは準々決勝で事実上の決勝戦のような試合を行い、一呼吸おいて、最後に真の決勝戦を戦うという展開になる可能性がきわめて高いです。
 
ウェールズ(C1位) VS アルゼンチン(D2位)
10月14日17時KO(日本時間 15日0時KO)
 
プールステージを4連勝できたウェールズと、初戦で敗れてから3連勝中のアルゼンチンの対戦。
ウェールズはアタックのバリエーションが豊富にあるわけではありませんが、戦術がシンプルな分、比較的安定した戦いをしてきた印象です。アルゼンチンは今まで持ち味を十分に発揮しているという感じではないですが、ノルマのベスト8に到達し、日本戦でいい形のフィニッシュをいくつかつくったことで吹っ切れる可能性もありますね。
間違いなくフィジカルな試合になると思いますが、ウェールズの試合間隔が1日長い分だけやや有利かもしれません。アルゼンチンはマテーラが負傷で離脱したバックローに突破力のあるイサを起用してきたので、彼がキーになるかなという気もしています。


アイルランド(B1位) VS ニュージーランド(A2位)
10月14日21時KO(日本時間 15日4時KO)

4年前の準々決勝と同じ組み合わせになりましたが、現在の力関係は当時と逆という感じがします。
昨年のテストマッチで負け越したこともあり、オールブラックスのほうがチャレンジャーという位置づけに近いように思います。
アイルランドはプールステージの試合ぶりを見てもきわめて充実している印象ですが、ベスト8の壁を今まで越えたことがない重圧をいかに乗り越えるかがポイントでしょうね。最初の20分をアイルランドが優位で進めるようなら、そのまま押し切れるような気がしています。
オールブラックスもベスト8で敗退という事態は避けなければならないはずですが、大会直前に南アフリカ、プールステージでフランスと、強豪相手にあっさり負けているあたり、かつての神通力は影を潜めている感じはします。


イングランド(D1位) VS フィジー(C2位)
10月15日17時(日本時間 16日0時KO)

イングランドはプールステージ4連勝。しかし、最終節のサモア戦は、レフェリング次第では落としていたかなという試合。
選手が出場停止などの事情でなかなか揃わなかったなどの事情もあるでしょうが、あまりスッキリした戦いができていたというわけではありません。
一方のフィジーはベスト8に進んだチームでは唯一の2敗。豪州に勝利して突破が有力視されてから重圧がかかったのか、奔放なアタックが影を潜め、ジョージアに苦戦、ポルトガルには逆転負けを喫しました。相手のレベルが決して低くなかったとはいうものの、調子がいいとは言い難い状況です。
大会直前のウォームアップマッチでイングランドは初勝利を献上しておりこの試合は必勝と考えているでしょうが、双方チーム状態がいいとは言えないので、4試合のなかで一番展開が読みにくい気がします。
経験値を踏まえればイングランドの勝利の可能性が高いようには考えますが、フィジーがチャレンジャーとしてのメンタリティを取り戻して思い切ったアタックができれば面白い試合になるように思います。


■フランス(A1位) VS 南アフリカ(B2位)
10月15日21時(日本時間 16日4時KO)

フランスはプールステージのナミビア戦で顎を骨折していた主将・SHのデュポンが復帰。無理に復帰したというわけではないと思いますが、いきなりの強敵ですので、そのプレーの出来がもっとも注目されるところです。
総じてチームの調子は悪くないものの、ディフェンス時の集中がアイルランド南アフリカと比べるとやや軽い印象もあるので、圧力のある相手との対戦でどう守るかがポイントになる気がします。
南アフリカアイルランドに敗れてプール2位になりましたが、キックの出来次第では勝敗が逆だった可能性もあり、前回の大会でもプール2位から優勝しましたので、おそらく敗戦はさほど気にしていないと思います。
フランスの応援がすごいことになると思われますが、より重圧を感じるのはホームのフランスだと思いますので、南アフリカがスコアで先行する展開になれば一気に勝利に傾く展開になることもあるような気もしています。
 

日本 VS アルゼンチン 試合所感

日本の4戦目、ナントでのアルゼンチンとの試合は27対39のスコアで日本が敗れました。
日本代表のワールドカップフランス大会の戦いはこれで幕を閉じました。

アルゼンチンは第2戦目のサモア戦に近い戦い方、すなわち敵陣でプレーする時間を長くしつつ、強力なFWを有効活用するような、より堅実な戦い方をしてくるかと予想していましたが、予想以上にBKに広くボールを展開するプレーを多く選択してきた印象です。
元からそういう狙いがあったのか、あるいは試合開始早々に簡単にトライが取れたことで日本のディフェンスが崩しやすいと判断したのかはわかりません。
ただ、結果的に日本のほうも自分たちの持ち味を出しやすい展開にはなったように思います。

母国のファンの期待というプレッシャーを相当感じていたこともあろうかと思われますが、アルゼンチンもハンドリングエラーやキックミスなど比較的安易なミスが多く、満足できる試合とは感じていないと思います。
しかし、日本がハイボールの処理が不得手である、BKのディフェンスが固くない、というプレーの特徴はスカウティングできていたと思われますので、試合の勝負どころでそこを的確に突いてきたことがスコアの差につながりました。
残りの20分の勝負の時間帯において、リザーブも含めた選手層の差も勝敗を分けました。これもあらかじめわかってはいたことです。

アルゼンチンのほうが、代表やクラブレベルでハイレベルな試合を経験している選手が多く、難しい時間帯の対処の仕方を知っていた感があります。
失点はしてもすぐに取り返し、逆転は許さないようゲームをコントロールしたあたりが、チーム力の差というものだと思います。
 
スコアが行き来する競った試合になりましたし、エンターテイメント性も十分あった試合だったとは思うものの、両者の力量の差も明確に感じられた試合だったように感じます。
試合後の日本代表選手の顔はおおむね清々しい感じでしたが、自分たちの力はすべて出し切ったが相手のほうが上だったということを素直に感じたからだと思います。
 
国内のウォームアップマッチのころの惨状を考えると、実戦のなかでチームの綻びを修正しチーム力を向上させてベスト8にもう少しで手が届くところまでよく持ってきた、というのが率直な感想です。
たらればをいえばもう少し望ましい結果もありえたのかもしれませんが、それを強調しすぎるのはスポーツ的な見方ではないでしょう。
 
2大会連続のベスト8には届かなかったものの、2015年大会から積み重ねてきた評価や実績を損なうことにはならなかったと思います。
日本代表関係者の奮闘を称えたいですね。
 
日本代表活動に関する総括は別に書きたいと思います。

日本 VS アルゼンチン 登録選手 所感

遅くなりましたが、ワールドカップフランス大会の日本代表の4戦目かつプールステージ最終戦、10月8日にナントで行われるアルゼンチン代表戦の試合登録選手が発表されています。現地時間13時、日本時間20時キックオフです。
 
https://www.rugby-japan.jp/news/52234

基本メンバーに大きな変更はありませんが、WTBフィフィタが初登場。
負傷からの復帰を目指していたSH流は間に合わなかったようですね。途中合流した山中がリザーブに入っています。
 
ここに来てフィフィタが初めて起用された意図は、相手のWTBボフェリのハイボール対策なんでしょうかね。フィフィタもそこまでハイボール処理が得意な印象はありませんが、ナイカブラよりサイズはあります。
後半相手が疲れたときにスピードのあるナイカブラを入れるという狙いかもしれません。
 
山中をリザーブに入れる狙いはよくわかりませんが、後半に投入してバックスリーの人の入替を行ってアタックを活性化させる狙いなのかもしれません。
 
対するアルゼンチンは、第2戦のサモア戦をベースにした起用。チェイカHCが考えるベストメンバーなのだろうということです。
前の試合のチリ戦で使った選手をもう少し混ぜてくるかと思いましたが、少々保守的な印象です。
 
前の試合で100キャップを達成したSOサンチェスを中心にしたほうがアタックが活性化するのは間違いないですが、思うにこの選手起用はアタックよりもどちらかというとディフェンスの安定感を重視した布陣。
陣地を取ることに重きを置いて、ペナルティゴール等を交えて確実にスコアで上回る戦い方をしてくる感はあります。
 
彼らがサモアと戦った試合に近いコンセプトだと思いますが、大雨だったその試合と違ってこの日は天気はよさそうなので、ボールはある程度動かしてくると思います。
BKを使ったアタックがこの大会ではあまり機能している印象がないですが、ポテンシャルとしては前に出る力に秀でた選手が多いので、日本としては自由にボールを展開させない対応は必要です。
 
彼らに押し込まれ続けると苦しくなるので、日本もエリアマネジメントをいかにできるかが勝敗の鍵を握りますね。キック戦術の巧拙が重要になりそうです。
 
 
 
 
 

日本 VS サモア 試合所感

日本の3戦目、サモアとの試合は28対22で日本が勝利しました。
これで最終戦に準々決勝進出の望みを残した、ということになります。
 
日本はサイズがあって機動力がある選手に対するディフェンスが苦手なので、相手の登録選手を見たとき、LOのマクファーランドと、日本のシャトルズでのプレー経験もあるFLセウがキープレイヤーと個人的に思っていました。
そうしたら、サモアの主将でLOのブイが登録変更でいなくなったと聞いてオヤと思い、最初の数分でセウが交代でいなくなってアレと感じました。
この試合の日本が整った戦いをしたのは事実ですが、相手のコンディションが整わなかったことに助けられた部分は確実にあります。
 
サモアが選手が揃っていた初戦が一番戦力が充実していた、というのは残念ながらというべきか、事実です。
ランキングが低いチームが有利になるように大会日程を考えれば大会全体の試合の質自体は上がるように思いますが、ワールドラグビーはそういう考え方は絶対にしないでしょうね。
 
日本も選手層が薄いので、後半の選手交代をあまり効果的にできないところではありますが、80分を通して同じ水準を保てないと、アルゼンチンを上回ることは相当難しいでしょう。
 
そのアルゼンチンはチリ戦に向けて、前の試合からメンバーをごっそり変えてきました。
BKの先発は、サモア戦から全員変わっています。
リザーブも含めれば、登録の33名は全員出場機会がありそうです。
勝ち点5もきっちり取る前提でしょうが、最終戦に向けて、日本よりも試合間隔が短いことへの配慮もあるでしょうね。ただ、このチームは欧州の一線級でプレーする選手ばかりなのでメンバーを落としたという印象は薄いですが。
 
 
 

日本 VS サモア 登録選手 所感

ワールドカップフランス大会の日本代表の3戦目、9月28日にトゥールーズで行われるサモア代表戦の試合登録選手が発表されています。現地時間21時、日本時間翌4時です。

https://www.rugby-japan.jp/news/52219


まあ、代わり映えしないメンバーということになります。前の試合でリザーブスタートだったレメキが先発に繰り上がった影響もあるでしょうが、李がリザーブに入り初出場をうかがうということがトピックスでしょうか。

試合間隔が空いて休養は十分だと思いますが、ほぼまったく同じ布陣で3戦目なので、相手も戦い方は研究できていると思われます。
 
とはいえ、相手のサモアも選手層は厚くないので、ほぼ同じような起用になっています。怪我人の影響もありますが。
 
アルゼンチンがやったように、サモアが自陣に入らせないようにコントロールできれば、相手にスコアさせないのはさほど難しくないと思います。今の日本のディフェンスでそれが徹底できるかどうかというとちょっと微妙なところですが。

また、この日は天気がよさそうで、サモアのハンドリングエラーはさすがに少ないはず。連続攻撃はアルゼンチン戦よりは継続してできると思われるので、日本としてはファーストかセカンドのフェーズで勢いを止めることが必要です。

 

ワールドカップ2023プールステージ 途中経過 所感

チームによっては3試合を消化したところもありますが、すべてのチームが2試合を終えてプールステージを折り返したという状況で、プール別の自分の事前予想を振り返ってみます。

https://www.rugbyworldcup.com/2023/pools


【プールA】

このプールについては、フランスとオールブラックスとの開幕戦が事実上の1位決定戦でフランスが有利、と書きましたがそれは見込どおり。イタリアと両チームとの対戦も残っているので順位はもちろんまだ確定ではありませんが。
フランスは歩みは順調ですが、今後に向けては、主将であり世界屈指のSHであるデュポンが顎を骨折し手術したのが懸念材料。大会中にプレーが可能になるかどうか。特別なマスクの用意などを検討しているようですが。
オールブラックスはこの大会では絶対的な力があるわけではないですが、今後取りこぼしをする可能性は低いとは思います。
イタリアは2試合で順調に勝ち点5ずつを積み重ね、ノルマの3位は少なくとも確保しました。チーム状態は悪くなさそうなので、オールブラックス、フランスとの好勝負を期待したいところです。
ウルグアイはフランス、イタリア相手に競った時間帯はつくりました。好チームなのでオールブラックス相手にも見せ場をつくってほしいところです。
ナミビアは厳しい試合が続いていますが、残りのウルグアイ戦で一勝をかけるということになります。



【プールB】

前回優勝の南アフリカは、アイルランドとの決戦に敗れましたが、スコットランドとの試合はすでに勝利しているため、突破は確実という状況。
アイルランドスコットランド戦を残しているので確定ではないものの、南アフリカをフィルターにして力関係を推し量ると、まあ決まりかなという気はします。
スコットランドは突破は厳しいようには思いますが、このまま敗退というには惜しいチームなので、見せ場はつくってほしいと思います。
トンガは見せ場もつくれていないわけではありませんが、やはり上位陣との差は小さくなかったですね。
ルーマニアは残念ながらさらに差があるような試合結果となっています。トンガ相手に一勝を目指したいところですが、なかなか厳しいと思います。


【プールC】

このプールではオーストラリアが勝ち抜けるのではないかと予想しました。数字上はまだ可能性は残っているものの、フィジーウェールズに連敗という状況のため、初のプールステージ敗退が濃厚ということになりそうです。
ウェールズは若手の起用がいい方向に転ぶかわからないと書きましたが、今のところ成果が出ているようです。
フィジーウェールズには敗れましたが、この試合はレフェリーのさじ加減だったような気もするし、オーストラリアには点差以上に差を見せた内容でした。残りの試合を取りこぼさなければ突破は有力という状況です。
ポルトガルはいいアタックを見せています。BKに勢いを感じる好チームです。
ジョージアはそのポルトガルに何とか引き分け。地力はあると思いますが、これまではあまり安定した力は見せられていません。


【プールD】

イングランドがアルゼンチンに負けるという予想をしていましたが、ジョージ・フォードのドロップゴール3連発など、彼のキャリア最高の試合がここで出て、結果的に予想は外れました。そこまでチームの出来がいいとは思いませんが、突破は確実。
アルゼンチンは、初戦で躓いたあと、まだポテンシャルを出し切っている感じはしませんが、絶対に落とせないサモア戦で相手に力を出させず、確実に勝ち点4を確保したあたりの試合運びに地力を感じます。手の内をわかっているチリ相手には、どんなメンバーを組んだとしても勝ち点を落とさないように思います。2位通過の場合、準々決勝は最終節の日本戦のあと中5日という日程ですので、日本戦を確実に取りつつ準々決勝にいかに余力を残せるか、という課題に向けた起用方法が注目されます。
日本はサモア、アルゼンチンに連勝することが必要です。当然容易ではありません。先述のように準々決勝は最終節のあと中5日という日程になりますが、選手層を考えるとそこを意識する余裕はないでしょうね。
サモアは元オールブラックスのSOソポアンガが負傷でもう出られないという話なので、ベテランのリアリーファノ頼みです。ベストメンバー、ベストコンディションであればイングランド相手にもいい勝負はできたと思いますが、日本と同様に選手層が厚くないので、最終戦はもはや厳しいかなと。ベスト8の可能性は残りますが、現実的には次回大会にストレートインできる3位になるために日本がターゲットになるはずです。
チリは最初の2戦は何とか持ちこたえていた印象ですが、3戦目のイングランド戦でディフェンスが崩壊してしまいました。最終戦は隣国でもある南米の強豪の胸を借りる試合になりますが、勝負は厳しいものになるでしょうね。

日本 VS イングランド 試合所感

日本代表のワールドカップ二戦目のイングランド戦は、12対34のスコアで敗れました。

日本代表は、イングランドがキックを多用してくるのは予想できていて、前半のうちはある程度対処できていたかと思いますが、後半に入って相手が展開によるアタックを織り交ぜてきてから、徐々に大きくゲインされるシーンが増えていったような印象です。
話題になった、相手PRマーラーの頭にボールが当たったトライシーンは不運だったものの、失トライは時間の問題だった感じはしますね。あれがなければもう少し粘れた可能性はあったかもしれませんが。

イングランドとしては、スクラムを優勢に進めることで、前半のうちにもう少しスコアチャンスがつくれるぐらいは想定していたようには思いますが、そこまで焦りを感じるようなことはなかったのではないかという気はします。
日本が敵陣22mのなかに入るシーンは限られていましたし、トライの匂いもほとんど感じられなかった試合だったかなと。

80分が終わるまでにスコアが上回っていれば良しというゲームマネジメントに伝統国らしさを感じる試合運びだったように思います。
負傷者、出場停止の事情なども考えると、選手のアタック能力のクオリティという面では、残るサモア、アルゼンチンのほうがイングランドよりも上であるように個人的には思いますが、イングランドは自分たちの最低限のことをきっちりやれる凄みはやはりあるように感じます。

イングランドの残り試合を考えると、初出場のチリが彼らを食うことはさすがに厳しいように思いますが、サモアが彼らを上回ったとしてもさほどの驚きではない気がしています。チリ以外の4チームはそこまでの力量差はないプールだと思います。

日本代表としては、今週末のアルゼンチンとサモアの試合を観察し、サモアのチーム状況をきっちり分析することが肝要ですね。