リーグワン2023-2024 ディビジョン1 戦力分析(カンファレンスA②)

続いて、カンファレンスAの残り3チームです。

 

静岡ブルーレヴズ

昨年は8位だったブルーレヴズ。上位チームには善戦しても勝利は遠かったという印象です。

退団した選手は多いのですが、主力だったとはいえない選手が多いですね。

新加入では元オールブラックスで、WCフランス大会ではトンガ代表でプレーしたFBピウタウの加入が目立つところです。ベテランらしい周囲を動かすプレーが期待されます。

トライゲッターのWTBツイタマがカテゴリAの扱いになったのも大きいように思います。BKではほかにもファアウリ、ファリアといった海外出身のカテゴリA選手がいますので、一定のパワー、スピートが期待できます。

FWは他チームと比べるとややパワー不足のように感じますが、ボールを動かすプレーである程度スコアは計算できますので、ディフェンスのクオリティを保つことが順位の上では鍵になるかと思います。キープレイヤーはWCでも充実していて、オフェンスでもディフェンスでも要になる南ア代表のクワッガ・スミスでしょうね。

全体的な戦力は増したと思いますので、少なくとも中位争いはできる気はしています。

 

コベルコ神戸スティーラーズ

昨年はトップリーグ以降最低順位の9位に沈んだスティーラーズ。この戦力で?という内容でしたが、ヘッドコーチも代わって大きな変革が求められます。新HCはワラビーズのHCだったデイブ・レニー。WC直前での解任でしたので、本人にも期するものはあると思います。

新加入として、オールブラックスとしてWCにも出場していたLOレタリック、No8アーディ・サベアという巨大戦力が加わりました。レタリックは以前も在籍していましたし、サベアもすぐに馴染むように思いますので、シーズン序盤からの活躍が期待できます。

昨年はリーダーシップが不在でちぐはぐな試合をしていた印象がありますので、チームの軸を早めに固められるかが鍵になると思います。その点でもレタリック、サベアへの期待は大きいですし、経験値の高いHCの手腕が求められるところです。

6位以上がノルマということになるでしょうが、さらにその先のプレーオフも戦力的には十分可能だと思いますが、チームの成熟を早めに進めていくことが重要になります。

 

三重ホンダヒート

昇格組のヒート。

さすがにディビジョン2の戦力のままというわけにはいかないので、積極的な補強を敢行し、チーム力は当然ながら昨年よりは増しています。

ただ、一線級の経験値の高い選手があまり多くないので、シーズン途中から復帰できるかどうかはわかりませんが、WCでハムストリングを痛めたアルゼンチン代表のFLマテーラの不在は大きいですね。その分、4年前に引き続き世界王者の一員となった南ア代表のLOモスタートへの期待は大きくなります。

新任のクローリーHCは、前職のイタリア代表のHCとしては、WCの最後の2試合でNZ、フランスに連続して大敗し、だいぶ印象が悪くなってしまいましたが、魅力的なアタックが構築できる経験のある指揮官だと思いますので、うまくチームをまとめられれば面白くなります。

昨年はBKからのアタックのバリエーションがあまり多くなかった印象ですが、新加入で、小柄ながらもSRでの経験は豊富なSOハントが早くチームのアタックの核として機能できれば可能性が膨らみます。突破力は抜群のFBバンクス、新加入で日本のプレーに慣れているWTBリーあたりがうまくかみ合ってくると魅力的なアタックができそうです。

日本人選手もだいぶ世代交代が進み、トップカテゴリでの経験が乏しい選手が少なくないので、チームとしてうまく経験値を高めていくことが必要ですね。入替戦に回る可能性が現状では高いように思いますが、チームの底上げができればある程度は戦える戦力はある気はします。

 

リーグワン2023-2024 ディビジョン1 戦力分析(カンファレンスA①)

一ヶ月ぶりの投稿になってしまいましたが、リーグワンの新シーズンも開幕まで一週間に迫りました。開幕前に各チームの戦力について感想を記しておきたいと思います。
ディビジョン1の12チームをまとめて書くと長くなるので、二つのカンファレンス別に2回、計4回でまとめてみます。
なお、2022-2023シーズンは、厳密にいうと昨年ではないような気はしますが、昨シーズンというと長くなるので昨年としておきます。
 
クボタスピアーズ船橋・東京ベイ
まずは、初優勝を果たしたスピアーズ。
主力メンバーでの入替は、他国代表経験者枠で元NZ代表のCTBクロッティが帰国し、同じポジションではありませんが、ウェールズ代表でWCにも出場したFBウィリアムズが加入。だけのはずでしたが、HOマークスが南アフリカ代表として出場したWCで負傷しシーズンアウトになったこともあって、急遽NZ代表で出場していたHOコールズが加入しました。本当に急遽のオファーだったようですが、親会社側も太っ腹です。
身体能力を活かしたプレーが多いマークスとはタイプが違いますが、コールズは抜け目ないプレーに特長のある選手なので、チームの連係が深まってくると相手にとって脅威になると思います。
昨年から主力の変更はそれぐらいで、コーチもほかの主力もそのままですので、今年も優勝候補の一角といえます。馬力のあるPRオペティ・ヘルがに日本人選手と同じ扱いのカテゴリAになって使いやすくなったのは大きい気もしますね。
ヘッドコーチのフラン・ルディケに日本代表ヘッドコーチ就任の噂があり、実現したら多少の影響は出るかもしれませんが、それで大崩れするという心配はないと思います。
 
 
昨年は4位だったサンゴリアス。この成績で満足するチームではないので今年は巻き返しが求められます。
選手の入替がかなり大規模なため、チームが本格稼働するにはそれなりの時間が必要ではないかというしますね。
退団は出場機会が多かった選手だけでも、HO中村、No8タタフ、SOのクルーデン、田村煕、CTBケレビ、WTBリーなど。
代わってといいますか、他国代表経験者でWCにも出場した、NZのFLケイン、ウェールズのSOアンスコム南アフリカのWTBコルビが加入。豪華ではありますが、ややミーハーな感じの補強という印象は受けます。
特にSOは総入替状態でアンスコム以外は経験値が少ないのが気になります。ユーティリティの森谷あたりが代わりを務めることも多そうです。
元々選手層は厚いチームですし、新加入も先に名前を挙げた選手以外でもいい選手が多いですが、コンビネーションの成熟に時間がかかりそうなので、優勝候補には推しづらいところです。ただ、コルビあたりは形がないところからでもトライに持っていけたりもしますし、シーズン後半に成熟が進めば、優勝に手が届いても特段不思議ではありません。
 
昨年はプレーオフ進出を惜しくも逃す5位のフィニッシュ。WCにも出場していたNZのFLフリゼル、SOモウンガの加入が注目されるところです。
オールブラックスのトッドの引退、SOテイラー、SHストラトンの移籍など、いくつかのポジションに変更はありそうですが、全体のチーム戦力としては増したような印象です。
特にモウンガと周囲の連係が深まれば、アタックのバリエーションがかなり増えそうですので、得点能力は上がるのではないかと思います。
FWにカテゴリAで起用できる日本の4年制大学卒業生のアイランダー系選手が多く、一定のパワーを維持できそうな点も大きい感はあります。戦力もかなり充実してきた印象はありますので、4位以内のプレーオフに進出する可能性は十分あるように思います。
 
 
 
 

決勝・3位決定戦 所感

遅くなりましたが、フランス大会のラスト2試合、決勝と3位決定戦を振り返ります。
 
イングランド  26  VS  23  アルゼンチン
 
時系列で10月27日現地時間21時KOの3位決定戦から。
プールステージの初戦と同じ組み合わせとなった3位決定戦。アルゼンチンは前回のフランス大会、2007年のときもホスト国フランスと開幕戦、3位決定戦を戦いました。その巡り合わせであれば勝てるはずでしたが、結果も同じにはなりませんでした。
イングランドは、3位決定戦らしいといえばそうですが、若手を中心に準決勝から大幅に入れ替えてきました。代表引退を表明しているロウズは出るのではと先日書きましたが出場しませんでした。同じく最後と言っていたSHヤングスは先発しました。
一方のアルゼンチンは、選手の入替は最低限でした。チェイカ氏はかなり保守的な人なのでしょう。
試合のほうは、試合序盤でアルゼンチンのディフェンスの精度が今一つで、あっさり13点を先に失点したのが最後に響いたという印象。アルゼンチンは試合の入りが悪いのが大会7試合目でも改善されませんでしたね。
選手も大部分を固定して戦い、チリ戦にしか登場しなかった選手も多いですが、もう少しうまい起用の仕方があったのではないかというように思います。色々と噛み合っていない部分もありながらここまで来たのは、運が味方した部分もありますが、局面を打開する選手の個人能力の高さという点はあると思います。
終盤のSOサンチェスがペナルティを狙ったシーンはタッチに出してからモールでトライを狙うのではと思いましたが、ちょっと判断が消極的だった印象ですね。
イングランドは試合後にWTBデイリーも代表引退を表明。そういう事情もあったでしょうが、3位決定戦にありがちなだれた感じは少なく、最後まで勝敗の興味をつないだ試合になりました。
 
 
そして、10月28日現地時間21時KOの決勝戦。場所は前日の3位決定戦と同じスタッド・ドゥ・フランス。
最終スコアは12対11となったわけですが、ファイナルでこのロースコアな展開は想定していませんでした。
南アフリカは、試合序盤で本職一人体制のHOでンボナンビが負傷で離脱した影響は小さくなかったように思います。本来はバックローであるフーリーも代わって登場してから、フィールドプレーやスクラムでは非常に奮闘していた印象ですが、ラインアウトスローはNZに圧力をかけられて苦戦しました。南アがマイボールラインアウトをもっとうまく確保できていたら、試合の展開もちょっと違ったでしょうね。
スコアが象徴するように、両チームともアタックというよりもディフェンスで見せ場を多い試合になりました。NZのケイン、南アのコリシの両キャプテンなど計4枚のカード、特にケインはレッドが出るなど、ファイナルは80分間15名ずつで見たいところでしたが、人数が減ってもディフェンスが緩慢になった印象もないので、双方際立った集中を見せました。派手なアタックとは無縁でしたが、これもラグビーですね。
たらればを言えば、普段だったら決めていそうなキックをモウンガ、ジョーディ・バレットが外したのはNZとしては痛かった。ファイナルの重圧ということなのでしょう。
南アについては同じような感想を前の試合でも述べました。ノックアウトステージに入ってから3試合連続の1点差勝利。アタックにも見どころがあるチームでしたが、最終的にはディフェンスが強いチームが勝つべくして勝ったということかもしれません。

 
 

決勝・3位決定戦 展望

残すところは決勝と3位決定戦の2試合のみ。
明日、明後日に更新する時間が取れなさそうなので、登録選手も発表される前ではありますが、展望を簡単に記しておきます。
 
 
イングランド VS アルゼンチン
まず、3位決定戦はプールDの初戦と同じ顔合わせになりました。
この試合はどうしても消化試合になるのは避けられないので、どのような選手が登場するかも不明。
多いパターンは主力選手と出場機会の少なかった選手のミックスですね。この大会が最後のワールドカップになるような選手も登場可能性が高いです。
そういう意味では、国際キャリアからの引退を表明しているイングランドのロウズ、また年齢的には最後になりそうなアルゼンチンのクレービー、サンチェスあたりのセンチュリオンは怪我でもなければ出るでしょうね。
出場した選手が手を抜くようなことは考えられませんが、やはり決勝と同じモチベーションというわけにもいかないので、やや大味な試合になりがち。この試合もプール初戦とは違って、オープンな展開のアタックをしあう試合になりそうな気がします。
 
 
南半球のジャイアント同士の対戦が実現しました。
準決勝での戦いは両極端でした。余裕を残した戦いだったにと、土俵際に追い込まれる展開だった南アフリカ。天候や相性の問題もありましたが。
まだこの時点では、準決勝で差別的発言があったとされる南アのHOンボナンビの去就が明らかになっていません。専門職が一人しかいない状況で彼が出場停止となれば影響は甚大。試合展開に大きな影響を与えかねないため、WRも慎重に判断するものと思われます。禍根が残らないような裁定を期待したいところです。
選手起用はニュージーランドはほぼそのままでしょうが、うまくいかなかった南アが入れ替えてくるかが注目。先日デクラークとポラードは先発では、と書きましたが、デクラークは後半勝負としてリザーブかもしれませんね。
南アは雨のコンディションもあって、前の試合のキック戦術が不発でしたが、あらためて精度が求められる試合になります。
 
 
 
 
 

準決勝 所感

準決勝2試合の感想です。
 
アルゼンチン  6  VS  ニュージーランド  44
https://www.rugbyworldcup.com/2023/match/semi-final-1-winner-quarter-final-1-winner-quarter-final-2

南半球の4ヶ国対抗戦、ラグビーチャンピオンシップの一試合という趣の試合となりました。先日、アルゼンチンのゲームプランがうまくはまればあるいは、というようなことを書きましたが、噛み合わないと両チームの試合はこういう展開になりがちです。
豪州人のアンガス・ガードナー主審がややバイアスのかかった笛を吹くという影響もあったかなという気もします。2020年の初勝利のときに、リスペクトがないとレフェリーに抗議したマテーラもいませんでしたしね。
さて、アルゼンチンのチェイカHCは、自分のプランニングした戦術や選手起用に固執するタイプなのだろうと思いますが、ちょっと無策すぎたという印象はあります。また、あきらかに敗色濃厚の展開なのに、リザーブのSOサンチェスをいつもどおり60分過ぎまで引っ張ったあたりもよく理解できませんね。
試合としては、前半の残り2分ぐらいの時間帯に敵陣でボールをキープして終わらせればよかった(3点でも取れれば最高)ものを、無理に攻めてから余計なトライを与えたのがアルゼンチンとしては決定的でしたね。後半早々の失トライもソフトな感じで、これで勝負は決まりました。
ニュージーランドに関して特段言うことはありませんが、いつも対戦している南半球のチームなので、北半球のチームよりはリラックスできたところはあるでしょうね。前の競った試合のあとで十分な緊張感をもってこの試合に臨んでいたことは伝わりましたが、この試合のあとのファイナルのリアクションがやや心配になる感じはします。
 
 
 
前日と打って変わって最後まで緊張感を保ったクロスゲームとなりました。
この両チームの対戦の場合、この試合のようなキックがモノをいう展開になりがちですが、雨が降り続けたコンディションが影響した部分も大きそうです。
トライの雰囲気を感じさせたのは、南アフリカのLOスナイマンがトライした瞬間ぐらいだったと思います。
南アフリカは用意していた戦術の大部分を出せていない感じがしましたので、イングランドがリードを保ったまま試合を終わらせることができたら会心の試合ということだったですが。イングランドはやれることが限られていたので、それをとことんやったという印象が強いです。エンターテイメントとしてどうかという向きもあるかもしれませんが、これもラグビーでしょうね。
南アフリカは地力は上という自覚はあったでしょうから、勝ってほっとしたという感想かと思います。ファイナルでは、デクラークやポラードは先発のような気がしますね。
イングランドは初戦のアルゼンチン戦に続き、2試合前のノートライのゲーム。気にしていないでしょうが。

準決勝 展望

フランス大会も残り4試合。準決勝の2試合の展望を記しておきます。
 
■アルゼンチン  VS  ニュージーランド
実績、総合力などを踏まえればニュージーランド優位は動かない試合ですが、アルゼンチンは2020年以降の同国とのテストマッチ7戦のうち2勝しています。2020年11月のシドニーでの初勝利、2022年8月のクライストチャーチでのアウェイ初勝利の2試合です。ちなみに、この試合の主審に指名されているアンガス・ガードナーは2020年の試合での主審でもありました。
オールブラックスは準々決勝で優勝候補の一角アイルランドを壮絶な試合の末、破りました。準決勝では優位な立場になりますが、あの強度の高いゲームで見せたようなハイパフォーマンスは2試合は続かない、大きな山を越えたあとでチームがやや緩い入り方をする可能性がある、といったところが懸念材料です。
アルゼンチンの二つの勝利の経験者の大部分は今回も残っています。どのようなパフォーマンスができたときにオールブラックスに勝てるのかを実体験として理解しています。頭でわかっていても80分間継続することが難しいわけですが、一度もオールブラックスに勝ったことがないチーム、選手がワールドカップの準決勝でそれを成し遂げるよりは難易度は高くないでしょう。3年間で2勝5敗。自分たちにはできると信じることができない勝率ではないですね。
ニュージーランドの順当勝ちの可能性が高い試合ではあるものの、彼らがあまりよくない試合の入り方をしたときと、アルゼンチンがゲームプランを着実に遂行することが重なったときに波乱が起こる可能性は十分ある、としておきます。
 
前回の大会の決勝の再現となるカード。前回大会の優勝HCであり、現在南アフリカのディレクターオブラグビーであるエラスムス氏は、イングランドの登録選手を予想する心理戦を仕掛けています。南アフリカほどの戦術のバリエーションがないので予想しやすいというのもあると思いますが。
イングランドは長い距離を一気に走り切ってのトライというシーンはなかなかつくれないと思いますので、南アフリカも対策は取ってくるでしょうがハイパントの使い方が一つ重要なポイントになる気がします。
また、ファレルなどいいキッカーはいますので、ペナルティで着実に加点できれば優位に立てるでしょう。ただ、南アフリカも同じことは考えますので、技術的にしっかりとアタック、ディフェンスを組み立てる必要もあると思います。
南アフリカオールブラックスと同様、激戦を制したあとの試合ですが、選手交代は早めに行っていたので、疲労は最小限と思われます。
キックを効果的に使って、速いWTBを活かすような展開はあるはずですので、イングランドとしては質の高いキックを蹴らせないためのディフェンスの工夫も必要でしょう。
ここまでの試合を見る限り、チームの総合力では南アフリカに分があると思いますが、イングランドが勝利するためにはかなり緻密に80分間をマネジメントする必要がありますね。
 

準々決勝 所感

遅くなりましたが、準々決勝4試合の感想をざっくりと記してみます。
先日も書いたように、組み合わせの兼ね合いで実力が近いもの同士の試合となったこともあって、白熱した試合が続きました。


ウェールズ  17   VS   29  アルゼンチン
https://www.rugbyworldcup.com/2023/match/quarter-final-1-winner-pool-c-runner-up-pool-d
 
序盤にアルゼンチンのアタックが空回りし、ミスやペナルティで失点を重ねたあたり、典型的なアルゼンチンの負けパターンの試合かと思いましたが、ウェールズにもミスが続き、最低限ぐらいの失点で留まったことが逆転勝利につながったかと思います。
ウェールズはアタックの手段が乏しく、再三のハイパントもほとんどアルゼンチンに確保されたことで攻め手がきわめて限られていました。また、ベテランがコンディション不良でも無理して出ていた感もあって、選手層に厚みがなかったですね。
アルゼンチンは最初にスコアするまで時間がかかりましたが、敵陣でプレーする時間が徐々に長くなり、ペナルティで得点できるようになっていきました。
双方にハンドリングエラーも多く、技術的にはやや低調な感もある試合でしたが、アルゼンチンのトライセービングタックル、インターセプトからのトライなど、終盤に見せ場がありましたね。
アルゼンチンはチームの完成度が上がってきた感じはあまりしないものの、ディフェンス時の規律は保てている印象。サンチェス、クレービー、モローニといったベテランが力を発揮したこともあってチームに勢いが増すかもしれません。


アイルランド  24   VS   28  ニュージーランド
https://www.rugbyworldcup.com/2023/match/quarter-final-2-winner-pool-b-runner-up-pool-a
 
序盤、オールブラックスにしてはボールが落ち着かない、ちょっと不思議な時間帯がありました。相当な重圧を感じていたということだと思いますが、そこでアイルランドが先にスコアしていたら違う展開もあったのかもしれません。
オールブラックスが総合力で勝負しないと割り切って、パス展開を最低限にして、少ない手数でトライを取ることに専念したのが功を奏した感があります。開幕前に南アフリカに大敗せず、開幕戦でフランスに負けていなければ、オールブラックスも違う試合の臨み方をして、ひょっとしたら結果も異なるものだったかもしれません。
アイルランドはベスト8の壁を越えたことがないなか今回は下馬評は上という状況。固くなるのは無理もないですが、プレーにどこかぎこちなさを感じる試合でした。強さを見せるというよりは勝つことに徹したオールブラックスをほめるべきかもしれませんが、失点がややあっさりしていた印象です。
今大会での引退を表明していたSOセクストンのほか、CTBアキ、SHギブソンパークなどのNZ出身者も気迫は十分だっただけにここで消えるのは惜しいですね。一回越えてしまえばベスト8の壁もなんてこともなくなるかもしれませんが、次の機会は4年後になります。すでにセクストンのほか、100キャップホルダーのWTBアールズも引退を表明していますが、30代以上の選手が多いだけに世代交代は進むかもしれません。


イングランド  30   VS   24  フィジー
https://www.rugbyworldcup.com/2023/match/quarter-final-3-winner-pool-d-runner-up-pool-c
 
開幕前のウォームアップマッチでは敗れていたイングランド。おそらくこのタイミングで当たる想定はしていなかったのでしょう。
勝つには勝ったが勝っただけという印象です。個々の選手の地力は垣間見えましたが、アタックは組織的ではなく、終盤ではフィジーの個人の力であっさり崩されていたようにも思います。唯一無敗でセミファイナルに辿り着きましたが、よほど戦術を整えない限りは、次は苦しいという気はします。
フィジーは奔放なアタックが影を潜めていましたが、追い詰められて後半20分ぐらいからちょっとだけ片鱗を見せたような感じです。同点に追いついてからのアタックでは焦る必要はなかったのにと思いますが、このあたりで落ち着いて仕留められるようなると、もう一段階上のステージに上がったといえるのでしょうね。とはいえ地力的にはいわゆるティア1と比べて遜色ないレベルに到達している感はあります。


フランス  28   VS   29  南アフリカ
https://www.rugbyworldcup.com/2023/match/quarter-final-4-winner-pool-a-runner-up-pool-b
 
フランスは初優勝を達成するのに十分な戦力は有していたと思いますが、ここで力尽きました。アイルランドもそうですが、クォーターファイナルで消えるには惜しすぎるチームです。
フランスに何かが足りなかったとは思いませんが、南アフリカのほうが相手を分析した対策を施してきて、それがはまったとはいえるでしょうね。試合を振り返れば、WTBコルビのキックチャージがその後のプレーにも少なからず影響を与えたとも思います。こういうテンションの試合では難しかったでしょうが、選手交代のタイミングももう少し工夫があったのではとも感じました。まあ結果論です。
南アフリカは、選手層の厚さ、戦術の柔軟性を見せました。どんな戦い方にも対応しうるという点で、現状優勝に一番近いように感じています。